第59回

第59回理学療法士国家試験 午後問題14

42歳の男性。2週前に感冒症状が出現し、3日前から両下肢のしびれと脱力を自覚。症状が進行し、精査入院。握力は両側5kg未満。MMTは上肢3、下肢2。四肢の深部腱反射は消失し病的反射は認めない。表在感覚は両側下腿以下で重度に低下し異常感覚を伴う。神経伝導検査で両側正中神経および両側腓骨神経の活動電位の振幅の著明な減少を認める。最も考えられるのはどれか。

  1. 髄膜炎
  2. 多発性筋炎
  3. 多発性硬化症
  4. 筋萎縮性側索硬化症
  5. Guillain-Barré症候群

解答解説

正解は 5. Guillain-Barré症候群 です。

解説

Guillain-Barré症候群(GBS)は、急性の末梢神経障害で、感染や感冒症状の後に免疫反応が誘発されて発症します。本患者の症状および検査所見はGBSの特徴に一致します。

  • 急性発症:2週前の感冒症状に続く下肢のしびれと脱力の進行。
  • 筋力低下:上肢3、下肢2のMMT。四肢の深部腱反射消失も典型的です。
  • 感覚障害:両側下肢の表在感覚低下と異常感覚を伴う。
  • 神経伝導検査:両側の活動電位振幅の著明な減少が、軸索障害型GBS(AMAN: 急性運動軸索型ニューロパチー)の可能性を示唆します。

各選択肢の解説

  1. 髄膜炎
    髄膜炎では発熱、頭痛、項部硬直が特徴的で、神経伝導障害や四肢脱力は通常みられません。この選択肢は誤りです。
  2. 多発性筋炎
    多発性筋炎は筋炎による筋力低下を伴いますが、反射消失や感覚障害は見られません。神経伝導障害も通常認められないため、この選択肢は誤りです。
  3. 多発性硬化症
    多発性硬化症は中枢神経系の脱髄疾患で、病的反射や中枢性麻痺が主症状となります。本患者に見られる末梢神経障害や反射消失とは一致しません。この選択肢は誤りです。
  4. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
    ALSは進行性の運動ニューロン疾患で、腱反射亢進がみられるのが特徴です。本患者では反射消失が認められるため、この選択肢は誤りです。
  5. Guillain-Barré症候群(正解)
    急性発症の脱力、反射消失、感覚障害、および神経伝導検査での活動電位の振幅減少がGBSの典型的な所見です。この選択肢が最も適切です。

ワンポイントアドバイス

Guillain-Barré症候群では、感染後の急性進行性の四肢脱力深部腱反射消失が診断の鍵となります。神経伝導検査や髄液検査(蛋白細胞解離の確認)による評価が重要です。重症例では呼吸筋麻痺のリスクがあるため、早期診断と適切な管理が必要です。