第54回

第54回理学療法士国家試験 午後問題28

若年者と比較した高齢者の歩行で正しいのはどれか。

  1. 歩隔は狭くなる。
  2. 歩幅は大きくなる。
  3. 腕の振りは減少する。
  4. 両脚支持期は短くなる。
  5. 遊脚相における足尖と床面との距離は大きくなる。

解答解説

正解は3です。

高齢者の歩行では、腕の振りが減少する特徴が見られます。これは筋力や柔軟性の低下、姿勢の安定性を保とうとする補償行動などが原因です。また、歩幅が小さくなる、両脚支持期が長くなるなど、安定性を重視した歩行パターンも特徴的です。遊脚相では足尖が床に近くなるため、つまずきやすくなります。

選択肢の解説

  1. 歩隔は狭くなる。
    誤りです。高齢者では安定性を確保するために歩隔(両足の横方向の間隔)は広くなる傾向があります。これは転倒を防ぐための補償行動です。
  2. 歩幅は大きくなる。
    誤りです。高齢者では筋力やバランス能力の低下により、歩幅はむしろ小さくなる傾向があります。これは身体の安定性を保ちながら歩行するための適応です。
  3. 腕の振りは減少する。
    正解です。高齢者では腕の振りが減少し、体幹が硬くなる傾向があります。これは歩行中のバランスを取るための姿勢の硬直化や可動域の制限によるものです。
  4. 両脚支持期は短くなる。
    誤りです。高齢者は歩行中の安定性を高めるため、両脚支持期は長くなる傾向があります。これにより歩行速度は低下します。
  5. 遊脚相における足尖と床面との距離は大きくなる。
    誤りです。高齢者では筋力や反応速度の低下により、足尖が床面に近づく傾向があります。これがつまずきやすい原因となります。

ワンポイントアドバイス

高齢者の歩行の特徴を覚える際は、「安定性を優先したパターン」をキーワードにすると理解しやすいです。歩隔が広がり、両脚支持期が長くなる一方で、歩幅が狭くなり、腕の振りが減少します。つまずきや転倒のリスク要因にも注意が必要です。