75歳の男性。脳梗塞による左片麻痺。発症後1か月で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。平行棒内歩行にて立脚相で図のような状況を呈した。立位歩行練習時の患側への対応で適切でないのはどれか。
- 踵部の補高
- 短下肢装具の使用
- 膝屈曲位での立位保持練習
- 前脛骨筋の治療的電気刺激
- 下腿三頭筋へのタッピング
解答解説
正解は5. 下腿三頭筋へのタッピングです。
解説
図に示された患者の歩行では、立脚相での足部の底屈位(つま先接地)が確認されます。この状況は、以下の要因が考えられます:
- 前脛骨筋の筋力低下(足関節背屈が不十分)
- 下腿三頭筋の痙縮(足関節底屈の過剰な緊張)
- 膝関節の伸展不全
これらに基づいて、適切な対応が求められます。
各選択肢の解説
- 踵部の補高(適切)
- 踵部を補高することで、足関節底屈位を補正し、踵接地を促す効果があります。痙縮により足部が底屈している場合に有効な対策です。
- 短下肢装具の使用(適切)
- 短下肢装具(AFO)は、足関節を背屈位で安定させる効果があります。立脚相でのつま先接地を改善し、踵接地を可能にします。
- 膝屈曲位での立位保持練習(適切)
- 膝屈曲位を保持する練習は、膝関節の伸展不全や足関節底屈筋の痙縮がある場合に効果的です。足部全体での接地を促します。
- 前脛骨筋の治療的電気刺激(適切)
- 前脛骨筋への電気刺激は、足関節背屈筋力の向上を目的とします。背屈を促進し、踵接地を改善するのに有効です。
- 下腿三頭筋へのタッピング(不適切)
- 下腿三頭筋へのタッピングは筋緊張を促進するため、足関節の底屈を強調する可能性があります。この患者では、すでに底屈位が目立つため、タッピングは不適切な対応です。
ワンポイントアドバイス
歩行時の立脚相で踵接地が不十分な場合、足関節背屈筋の強化と底屈筋の過緊張の緩和が重要です。具体的には、短下肢装具の使用や治療的電気刺激が有効です。一方で、過緊張を助長するアプローチは避けるべきです。