第54回

第54回理学療法士国家試験 午後問題17

82歳の男性。15年前から動作時の息切れ及び咳や痰の増加がみられ、自宅近くの医療機関にて加療していた。徐々に動作時の呼吸困難感が強くなり、入浴動作で息切れを感じるようになっている。3年前から在宅酸素療法が開始されている。動脈血ガス分析は PaO2 65 Torr、PaCO2 47 Torr、HCO3¯ 29.5 mEq/L、肺機能検査は、%VC 62 %、FEV1 % 42 % であった。吸入薬として長時間作用性 β2 刺激薬、長時間作用性抗コリン薬が処方されている。本症例に有酸素運動を行う場合の運動強度として最も適切なのはどれか。

  1. 7METs
  2. 修正 Borg 指数7
  3. 最大仕事量の75%
  4. 目標心拍数130/分
  5. 最大酸素摂取量の40%

解答解説

正解は5. 最大酸素摂取量の40%です。

解説

本症例は慢性閉塞性肺疾患(COPD)であり、肺機能が低下しているため、安全かつ効果的に運動療法を行うには適切な運動強度の設定が重要です。特に、過負荷による呼吸困難や循環器系への過剰な負担を避ける必要があります。

各選択肢について

  1. 7METs(誤り)
    • METs(運動時の代謝当量)は安静時代謝の倍数で表します。7METsは激しい運動に相当し、高齢かつ呼吸機能が低下した患者には過負荷となり、不適切です。
  2. 修正 Borg 指数7(誤り)
    • Borg指数は呼吸困難感や運動負荷感を主観的に評価する方法です。7は非常に強い負荷を示すため、COPD患者に対しては過負荷です。通常、Borg指数は3~5(ややきつい程度)が適切です。
  3. 最大仕事量の75%(誤り)
    • 最大仕事量の75%は高強度に相当し、COPD患者における運動療法としては負担が大きすぎます。安全性を考慮するなら、50%程度が推奨されます。
  4. 目標心拍数130/分(誤り)
    • 高齢者や肺機能低下がある患者では、目標心拍数を年齢や基礎疾患に合わせて設定する必要があります。この患者の場合、130/分は過負荷の可能性が高いです。
  5. 最大酸素摂取量の40%(正解)
    • 最大酸素摂取量の40%は、COPD患者における運動療法の適切な強度範囲です。低~中強度に該当し、酸素供給と消費のバランスを保ちながら、安全に運動を進めることが可能です。

ワンポイントアドバイス

COPD患者における運動療法では、以下の点を考慮します:

  • 運動強度:最大酸素摂取量の40~60%やBorg指数3~5(ややきつい)が適切。
  • 運動様式:ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を中心に行う。
  • 酸素療法の併用:在宅酸素療法を行っている患者では運動時も酸素を使用する。

COPD患者の運動療法は、呼吸リハビリテーションの一環として全身の持久力や生活の質を向上させるために重要です。適切な強度設定を心がけましょう。