第54回

第54回理学療法士国家試験 午前問題6

56歳の男性。発症時に明らかな運動麻痺はないが、歩くとすぐによろけて物につかまっていないと立っていられなくなり、頭部CT検査で脳出血と診断された。この患者の頭部CT画像として最も可能性が高いのはどれか。

解答解説

正解は1. ①です。

解説

この患者の主な症状は、明らかな運動麻痺がないにもかかわらず、歩行時によろけるというものです。この特徴は、小脳の障害による運動失調に一致します。小脳出血では、重度の麻痺が出現しないことが多い一方で、平衡感覚や協調運動が大きく損なわれ、立位や歩行が困難になります。

以下は、選択肢ごとのCT画像の病変部位と臨床症状を考慮した解説です。

選択肢の解説

  1. ①(正解)
    小脳の出血が明確に認められる画像です。小脳の障害により平衡感覚が乱れ、患者が報告している歩行困難や立位の不安定さが説明できます。この症例は、小脳出血として最も適切です。
  2. ②(誤り)
    出血は大脳皮質に局在しています。この部位の出血では運動麻痺や感覚障害が主症状となることが多いですが、この患者には運動麻痺がみられないため、適切ではありません。
  3. ③(誤り)
    視床の出血が示されています。視床出血では、片麻痺や感覚障害が主に現れますが、この患者には片麻痺がないため、可能性は低いです。
  4. ④(誤り)
    内包付近の出血が認められます。内包は運動神経路が通過するため、内包の出血では高度な片麻痺が出現することが多いですが、この患者には麻痺がないため該当しません。
  5. ⑤(誤り)
    大脳皮質の外側部の出血が示されています。この部位の出血では、麻痺や感覚障害、あるいは高次機能障害が見られる可能性がありますが、この患者の主訴とは一致しません。

ワンポイントアドバイス

小脳出血の典型的な症状として、運動失調平衡感覚障害めまいが挙げられます。一方で、麻痺が軽度または認められないことが多いため、臨床症状に注意して鑑別診断を行う必要があります。CT画像では、小脳出血が中央寄りまたは一側に存在することが一般的です。