11.頸髄損傷者の起き上がり動作を図に示す。Zancolli の四肢麻痺上肢機能分類における機能残存レベルはどれか。
- C5A
- C5B
- C6A
- C6BⅡ
- C7A
解答解説
正解は4. C6BⅡです。
解説
Zancolli の四肢麻痺上肢機能分類は、頸髄損傷者における上肢の機能残存レベルを評価する指標であり、損傷高位に応じて分類されます。この分類は、特に上肢の運動能力や残存筋力を基に、日常生活動作の遂行能力を評価します。
図に示された動作について
図では、肘を支点にして体を起こし、肘伸展の代償動作を用いて起き上がっています。この動作は、以下の条件を満たします:
- 手関節背屈の機能がある(C6の支配)。
- 手指屈筋や伸筋の随意的な機能はなく、代償的な手の使用を行っています(例:テノデーシス機能を利用)。
- 肘伸展(C7支配)はないため、肩や肘を支点に代償動作を行っています。
これらから、C6レベルでの機能残存が示唆され、さらに分類として「BⅡ」が該当します。
各選択肢の解説
- C5A(誤り)
- C5レベルでは主に肘屈曲(上腕二頭筋)が残存しますが、手関節背屈はありません。このため、図のような動作は不可能です。
- C5B(誤り)
- C5BはC5Aに比べて代償動作の範囲が広がりますが、手関節背屈の機能がない点は同じです。
- C6A(誤り)
- C6Aでは手関節背屈が可能ですが、テノデーシス機能を効果的に使用できるレベルには至りません。
- C6BⅡ(正解)
- C6BⅡでは手関節背屈が可能であり、テノデーシス機能を用いて図のような起き上がり動作が可能です。この状態が図に該当します。
- C7A(誤り)
- C7Aでは肘伸展(上腕三頭筋)が可能となり、より効率的に起き上がり動作ができますが、図のような代償動作を必要としないため該当しません。
ワンポイントアドバイス
Zancolliの分類は、損傷レベルごとの具体的な機能残存や代償動作の特徴を理解することが重要です。特に、C6レベルでは手関節背屈やテノデーシス機能が重要な役割を果たします。図のような動作パターンを見た際には、C6BⅡを念頭に置きましょう。
12.この患者において機能していると推測される筋はどれか。
- 円回内筋
- 深指屈筋
- 上腕三頭筋
- 長母指伸筋
- 尺側手根伸筋
解答解説
正解は1. 円回内筋です。
解説
Zancolli の四肢麻痺上肢機能分類におけるC6BⅡの患者において、C6レベルで支配される筋肉は機能が残存していると考えられます。これにより、手関節背屈や前腕の回内運動が可能となります。
各選択肢の解説
- 円回内筋(正解)
- 円回内筋はC6-C7の支配を受けます。この患者ではC6レベルが機能しており、回内運動が可能なため、円回内筋が機能していると推測されます。
- 深指屈筋(誤り)
- 深指屈筋はC8-T1の支配を受けます。C6レベルの患者では深指屈筋の機能は残存しません。
- 上腕三頭筋(誤り)
- 上腕三頭筋はC7の支配を受けます。この患者ではC7以下の機能は残存していないため、上腕三頭筋は機能していません。
- 長母指伸筋(誤り)
- 長母指伸筋はC7-C8の支配を受けます。この患者ではC6レベルのみが機能しているため、長母指伸筋は機能していません。
- 尺側手根伸筋(誤り)
- 尺側手根伸筋はC7-C8の支配を受けます。この患者ではC6レベルが機能しているため、尺側手根伸筋は機能していません。
ワンポイントアドバイス
頸髄損傷の評価では、損傷高位(Cレベル)に応じて機能が残存している筋を推測することが重要です。C6では、円回内筋、腕橈骨筋、橈側手根伸筋などが残存しており、特に円回内筋は前腕の回内運動に寄与します。損傷レベルと筋肉の支配神経の関連を整理して覚えておきましょう。