第55回

第55回理学療法士国家試験 午後問題47

人工呼吸器装着患者の理学療法で適切でないのはどれか。

  1. 離床はベッドアップ60°までとする。
  2. 体位変換を行い気道内分泌物の移動を促す。
  3. 気管内吸引時は陰圧をかけずに吸引カテーテルを挿入する。
  4. 気管内吸引に使用するカテーテルは滅菌したものを使用する。
  5. 会話が不可能なため患者が自分のニーズを伝えられるように援助する。

解答解説

正解は1(離床はベッドアップ60°までとする)です。
人工呼吸器装着患者に対しても、全身状態が安定していれば積極的な離床が推奨されます。ベッドアップ60°で制限する理由はありません。早期離床は、廃用症候群や肺炎予防、全身状態の回復促進に重要です。患者の状態に応じてベッドサイドでの座位保持やリクライニング車椅子での離床なども検討します。

各選択肢の解説

  1. 離床はベッドアップ60°までとする。
    適切でありません。離床の範囲は患者の状態に応じて柔軟に調整すべきです。全身状態が安定している場合は、60°以上のベッドアップや椅子への移乗も含めた早期離床を行うことが推奨されます。この選択肢は誤りです。
  2. 体位変換を行い気道内分泌物の移動を促す。
    体位変換は気道内分泌物の移動や肺の換気改善を図るために有効です。分泌物の貯留を防ぎ、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防にも寄与します。この選択肢は適切です。
  3. 気管内吸引時は陰圧をかけずに吸引カテーテルを挿入する。
    陰圧をかけながら吸引カテーテルを挿入すると、粘膜損傷を引き起こす可能性があるため、陰圧をかけずにカテーテルを挿入するのが基本です。この選択肢は適切です。
  4. 気管内吸引に使用するカテーテルは滅菌したものを使用する。
    気管内吸引は気道内に直接アクセスするため、感染予防の観点から滅菌されたカテーテルを使用するのが原則です。この選択肢は適切です。
  5. 会話が不可能なため患者が自分のニーズを伝えられるように援助する。
    人工呼吸器装着患者は会話が困難なため、文字盤やジェスチャー、コミュニケーションボードなどを活用し、患者が意思を伝えられるよう支援することが重要です。この選択肢は適切です。

ワンポイントアドバイス

人工呼吸器装着患者への理学療法では、早期離床体位管理が重要な役割を果たします。離床や吸引手技を行う際は、患者の全身状態や安全性を十分に確認し、医療チームと連携して進めることが必要です。