第55回

第55回理学療法士国家試験 午後問題38

他の筋への影響を最小限にして伸張運動を行う場合、伸張筋と運動方向の組合せで適切なのはどれか。

  1. 薄筋      ― 股関節伸展位、膝関節屈曲位で股関節外転
  2. 中間広筋    ― 股関節伸展位・内外旋中間位で膝関節屈曲
  3. ヒラメ筋    ― 膝関節伸展位、足部内外反中間位で足関節背屈
  4. 三角筋前部   ― 肩関節内外旋中間位、肘関節伸展位で肩関節伸展
  5. 長橈側手根伸筋 ― 肘関節伸展位、前腕回内位、手関節尺屈位で掌屈

解答解説

正解は5(長橈側手根伸筋 肘関節伸展位、前腕回内位、手関節尺屈位で掌屈)です。
長橈側手根伸筋は、肘関節伸展、前腕回内、手関節尺屈の位置で伸張が効果的に行えます。この肢位は、他の手関節周囲筋(短橈側手根伸筋や尺側手根伸筋など)への影響を最小限に抑えながら、長橈側手根伸筋をターゲットとして伸張するのに適しています。

各選択肢の解説

  1. 薄筋 股関節伸展位、膝関節屈曲位で股関節外転
    薄筋は股関節内転と膝関節屈曲を担う筋肉です。股関節外転は適切な伸張運動の一つですが、股関節伸展位や膝関節屈曲位では薄筋が十分に伸長されません。
  2. 中間広筋 股関節伸展位・内外旋中間位で膝関節屈曲
    中間広筋は膝関節伸展を主な機能とするため、膝関節屈曲で伸張可能です。しかし、大腿直筋や内側広筋、外側広筋も同時に伸張されるため、中間広筋をターゲットとした伸張には適していません。
  3. ヒラメ筋 膝関節伸展位、足部内外反中間位で足関節背屈
    ヒラメ筋は膝関節屈曲時でも伸張可能であり、膝関節伸展位では腓腹筋も一緒に伸張されるため、ヒラメ筋のみをターゲットとするには不適切です。
  4. 三角筋前部 肩関節内外旋中間位、肘関節伸展位で肩関節伸展
    三角筋前部は肩関節屈曲に関与するため、肩関節伸展で伸張可能です。しかし、肘関節伸展位では上腕二頭筋も伸張されるため、三角筋前部を特異的に伸張する方法としては不十分です。
  5. 長橈側手根伸筋 肘関節伸展位、前腕回内位、手関節尺屈位で掌屈
    長橈側手根伸筋は、肘関節伸展、前腕回内、手関節尺屈と掌屈の動きで特異的に伸張されます。この肢位では、他の手関節周囲筋への影響が最小限に抑えられるため、ターゲットを限定した伸張運動として適切です。

ワンポイントアドバイス

伸張運動を行う際には、ターゲットとなる筋肉の解剖学的機能と作用を理解することが重要です。また、他の筋への影響を最小限に抑える肢位を選択することで、効率的で効果的なストレッチが可能になります。長橈側手根伸筋の伸張では、手関節の動きと前腕の回内が重要なポイントとなります。