遂行機能障害の診断に用いる検査はどれか。
- WCST
- WAIS-Ⅲ
- 図形模写
- Reyの複雑図形検査
- PASAT (paced auditory serial addition test)
解答解説
正解は1(WCST)です。
ウィスコンシンカード分類課題(WCST: Wisconsin Card Sorting Test)は、遂行機能(計画、柔軟な思考、行動の抑制)を評価する検査として広く用いられます。被験者はカードの分類ルールを試行錯誤しながら学び、ルールが変更された際に柔軟に対応する能力を測定します。遂行機能障害がある場合、このルール変更への適応が困難となり、エラーが増加します。
各選択肢の解説
- WCST
遂行機能(問題解決能力や柔軟性)を評価する代表的な検査で、特に前頭葉機能の障害の診断に役立ちます。ルールの変更への対応力や思考の柔軟性を測定するため、遂行機能障害の診断に適しています。 - WAIS-Ⅲ
WAIS-Ⅲ(ウェクスラー成人知能検査)は、言語理解や作動記憶などの知能を総合的に測定する検査です。遂行機能の評価が含まれる部分もありますが、目的は知能指数(IQ)の評価であり、遂行機能障害を直接診断するものではありません。 - 図形模写
図形模写は、視覚認知や構成能力を評価する検査です。遂行機能というよりも、視覚認知障害や構成失行の評価に適しています。遂行機能障害の診断には直接関係ありません。 - Reyの複雑図形検査
Reyの複雑図形検査は、視覚記憶や注意機能を評価する検査です。複雑な図形を模写し、その後に再現することで記憶や視覚的注意力を評価しますが、遂行機能障害の診断には適しません。 - PASAT
PASAT(paced auditory serial addition test)は、聴覚的注意、作動記憶、情報処理速度を評価する検査です。遂行機能を間接的に評価することもありますが、主に注意障害や作業記憶を測定するもので、遂行機能障害の診断には直接関与しません。
ワンポイントアドバイス
遂行機能障害は、前頭葉機能の低下によって生じ、計画、判断、柔軟性、抑制などに影響を及ぼします。WCSTは、遂行機能の評価に最も適した検査の一つであり、前頭葉の働きを評価する際に広く使用されます。他の検査も補助的に用いることで、より多角的な診断が可能となります。