第53回

第53回理学療法士国家試験 午後問題17

70歳の男性。3年前に右手の振戦によってParkinson病を発症し、在宅で治療を行っている。ADLは自立していたが、1か月前に風邪をひいてから歩く速さが遅くなり、歩行の際に一歩目が思うように前に出ず、歩き出してからも前方に転びそうになることが多いという。在宅での理学療法における歩行指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 両下肢に弾性包帯を装着する。
  2. 足関節に重錘バンドを装着する。
  3. 一歩目を小さく前に出すよう指導する。
  4. 床にはしご状の目印を付けてまたがせる。
  5. かけ声などをかけてもらいながら歩くよう指導する。

解答解説

正解は4と5です。

Parkinson病の症状として、歩行開始時の一歩目が出にくい(すくみ足)や前方への転倒リスクがあります。この患者には、歩行のリズムを作り、視覚や聴覚の刺激を使った指導が効果的です。

各選択肢の解説

  1. 両下肢に弾性包帯を装着する。
    弾性包帯は浮腫の軽減には有効ですが、Parkinson病の歩行障害には効果がありません。すくみ足や歩行開始時の困難には直接関係ないため、不適切です。
  2. 足関節に重錘バンドを装着する。
    重錘バンドを装着すると、運動負荷が増加します。筋力トレーニングには有効ですが、歩行開始やすくみ足の改善には逆効果となる可能性があるため、不適切です。
  3. 一歩目を小さく前に出すよう指導する。
    一歩目を小さく出す指導は、すくみ足の改善には適していません。歩幅が狭くなることで、さらに前方への転倒リスクが高まる可能性があります。不適切です。
  4. 床にはしご状の目印を付けてまたがせる。
    視覚的なガイドとして床にしご状の目印を付けると、すくみ足の改善に有効です。リズムを意識しやすく、歩行がスムーズになるため、適切な指導方法です。
  5. かけ声などをかけてもらいながら歩くよう指導する。
    聴覚刺激によるリズム付けは、すくみ足や歩行リズムの改善に有効です。かけ声をかけることで、リズムを保ちやすくなり、適切な歩行指導となります。

ワンポイントアドバイス

Parkinson病患者の歩行障害には、すくみ足や小刻み歩行、前方への突進歩行が特徴的です。視覚や聴覚の刺激を用いたリハビリが効果的で、床に目印を付けたり、リズムに合わせて歩くよう指導することで改善が期待できます。