第53回

第53回理学療法士国家試験 午後問題6

脳出血後の頭部CT(別冊No.1)を別に示す。最も生じやすい症状はどれか。

  1. 系列的な動作が順番通りにできない。
  2. 脳出血発症前のことが思い出せない。
  3. 左からの刺激に反応しない。
  4. 左手の感覚が脱失する。
  5. 人の顔が区別できない。

解答解説

正解は4. 左手の感覚が脱失する。です。

解説

頭部CT画像を見ると、右側の視床付近に脳出血が認められます。視床は感覚情報の中継点として重要であり、ここに損傷が起きると対側(左側)の感覚障害が生じる可能性が高いです。このため、左手の感覚が脱失するが最も適切な答えとなります。

その他の選択肢

  1. 系列的な動作が順番通りにできない
    系列的な動作に問題が生じるのは、前頭葉(特に左前頭葉)の機能障害によるものが多いです。本症例では視床が損傷されており、前頭葉機能障害は想定されません。不正解です。
  2. 脳出血発症前のことが思い出せない
    記憶障害(特に逆行性健忘)は、海馬や側頭葉に影響がある場合に起こります。本例では視床が障害部位であり、この症状は説明できません。不正解です。
  3. 左からの刺激に反応しない
    左側の無視(左側半側空間無視)は、右側頭頭頂葉接合部(劣位半球)に損傷がある場合に生じることが多いです。本症例では視床が病変部位であり、該当する症状はありません。不正解です。
  4. 人の顔が区別できない
    顔の認識障害(相貌失認)は、右側の側頭後頭葉接合部に障害がある場合に生じます。本例の病変部位である視床とは関係がないため、不正解です。

ワンポイントアドバイス

視床の障害では、対側の感覚障害が最も一般的な症状です。脳出血の画像を見たときは、病変部位がどの神経系を侵しているかを素早く判断し、予測される症状をイメージできるようにしましょう。また、視床は感覚情報の統合や中継を担うため、「感覚障害」がキーワードとなります。