第53回

第53回理学療法士国家試験 午後問題5

車椅子乗車中に体幹を右に傾けたまま寝てしまい、アームレストに右上腕外側を長時間圧迫していた。目が覚めると、図のように右手の斜線部分に感覚鈍麻を認めた。絞扼性損傷を受けた神経はどれか。

  1. 腋窩神経
  2. 筋皮神経
  3. 尺骨神経
  4. 正中神経
  5. 橈骨神経

解答解説

正解は5です。

橈骨神経は、腕神経叢の一部であり、上腕後面から前腕後面に分布し、図のように手背の母指側外側にも感覚を支配します。長時間の圧迫による絞扼性神経損傷が起きると、該当領域に感覚鈍麻や運動麻痺が現れることがあります。

各選択肢の解説

  1. 腋窩神経
    腋窩神経は肩関節と上腕外側に感覚を支配しますが、手背の母指側外側は支配しません。そのため、この選択肢は不適切です。
  2. 筋皮神経
    筋皮神経は上腕の屈筋群を支配し、前腕外側の感覚を担当しますが、手背の母指側外側は含まれません。このため不正解です。
  3. 尺骨神経
    尺骨神経は手掌と手背の小指側に感覚を支配します。図の感覚鈍麻の範囲は尺骨神経の支配領域に含まれないため、不適切です。
  4. 正中神経
    正中神経は手掌の母指から環指橈側までを主に支配しますが、手背の母指側外側には関与しません。そのため不正解です。
  5. 橈骨神経
    橈骨神経は上腕後面、前腕後面、手背の母指側外側を支配します。今回の感覚鈍麻の範囲は橈骨神経の支配領域と一致するため、正解です。

ワンポイントアドバイス

橈骨神経麻痺は、長時間の圧迫(例: アームレストへの依存)や外傷により発生しやすいです。 臨床では、感覚障害に加えて、手首や指の伸展障害(下垂手)を伴うことが多い点を理解しておくことが重要です。支配領域を図とともに覚えると、試験対策に役立ちます。