85歳の女性。自宅仏壇のろうそくの火が右袖に引火し、右前腕から前胸部および顔面にⅢ度10%とⅡ度15%の熱傷および気道熱傷を受傷した。受傷翌日に前胸部から右前腕前面にかけて植皮術を実施した。術後早期から開始する理学療法として正しいのはどれか。
- squeezingによる排痰を実施する。
- 前腕は最大回内位に保持する。
- 肩関節は外転位に保持する。
- 筋力増強運動は禁止する。
- 起立歩行は禁止する。
解答解説
正解は3. 肩関節は外転位に保持する。です。
熱傷後、特に植皮術後の関節拘縮を予防することが理学療法の重要な目標です。肩関節を外転位に保持することで、瘢痕収縮による運動制限を予防し、皮膚移植部位の可動性を維持することができます。術後早期から適切なポジショニングを行うことが機能回復の鍵となります。
各選択肢の解説
- squeezingによる排痰を実施する。
気道熱傷があるため、排痰を促進することは重要です。ただし、squeezingは胸郭の圧迫を伴うため、前胸部に植皮部位がある場合には禁忌です。 この選択肢は不適切です。 - 前腕は最大回内位に保持する。
前腕を回内位に保持すると、長時間の不適切な姿勢により筋緊張や関節の拘縮を引き起こす可能性があります。植皮後は関節を中間位または機能的肢位に保持することが推奨されます。 この選択肢は不適切です。 - 肩関節は外転位に保持する。
正解です。肩関節を外転位に保持することで、瘢痕の収縮による運動制限や関節拘縮を予防できます。 植皮後早期から適切なポジショニングを行うことで、後の機能障害を防ぐことができます。 - 筋力増強運動は禁止する。
術後早期であっても、植皮部位に過剰な負荷をかけない範囲で軽度の筋力増強運動を行うことは可能です。筋力低下の予防や血流改善の観点からも適切です。 禁止することは不適切です。 - 起立歩行は禁止する。
術後早期であっても、血行動態が安定していれば起立歩行を行うことが推奨されます。 筋力低下や関節拘縮の予防、全身状態の改善に役立ちます。この選択肢は不適切です。
ワンポイントアドバイス
熱傷後および植皮術後の理学療法では、関節拘縮予防が重要です。特に肩関節や肘関節では、瘢痕による制限を防ぐため、適切なポジショニング(肩関節外転位、肘関節伸展位)が必要です。また、全身状態を考慮しながら、可能な範囲で早期離床や運動を進めることが重要です。