第57回

第57回理学療法士国家試験 午後問題96

イネイブラー(enabler)である家族と患者との共依存が問題となる疾患はどれか。

  1. うつ病
  2. 統合失調症
  3. アルコール依存症
  4. Alzheimer型認知症
  5. 自閉スペクトラム症

解答解説

正解は3です。

アルコール依存症では、患者自身の問題行動だけでなく、家族など周囲の人が患者の問題を支える行動を取ること(イネイブリング)が共依存の要因となり、治療の妨げになることがあります。家族は、患者の行動や状態を無意識のうちに助長することがあり、これを適切に理解し対応することが重要です。

各選択肢の解説

  1. うつ病
    うつ病患者との家族関係でも支援が重要ですが、共依存やイネイブリングが特に問題となることは少なく、依存症の範囲には入りません。この選択肢は誤りです。
  2. 統合失調症
    統合失調症では、患者と家族の関係において感情的な負担が問題となることがありますが、イネイブリングや共依存がアルコール依存症ほど問題になることはありません。この選択肢は誤りです。
  3. アルコール依存症(正解)
    正しい選択肢です。アルコール依存症では、家族が患者の飲酒問題を隠したり、支えすぎたりすることで問題が継続・悪化します。これが共依存と呼ばれる状態であり、治療の障害になることがあります。
  4. Alzheimer型認知症
    Alzheimer型認知症では、家族による介護が大きな負担となりますが、イネイブリングや共依存とは異なります。この選択肢は誤りです。
  5. 自閉スペクトラム症
    自閉スペクトラム症の治療や支援では家族の役割が重要ですが、イネイブリングや共依存は問題となりません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

共依存とは、患者と家族など周囲の人が互いに依存しあい、問題行動を助長する関係のことを指します。特にアルコール依存症で見られ、治療においては次の対応が重要です:

  • イネイブリングを減らす:家族が患者の問題行動を支える行為を控える。
  • 家族の教育と支援:共依存を防ぐための知識を提供し、専門家による支援を受ける。
  • 家族も治療の一部:家族全体が治療に関与することが効果的です。

問題の本質に目を向け、根本的な改善を目指す治療が必要です。