第54回

第54回理学療法士国家試験 午前問題19

78歳の男性。慢性閉塞性肺疾患の急性増悪により人工呼吸器管理中である。意識レベルJCS(Japan Coma Scale)Ⅱ-20、体温37.5℃、呼吸数は26回/分、努力性呼吸を認める。二次的合併症の予防目的で行う理学療法で適切でないのはどれか。

  1. 呼吸介助
  2. 体位排痰法
  3. ベッドアップ
  4. 関節可動域運動
  5. 徒手的抵抗運動

解答解説

正解は5. 徒手的抵抗運動です。

解説

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪では、呼吸負荷の増加や酸素化の低下、さらには全身状態の悪化による二次的な合併症(筋力低下、肺炎、関節拘縮など)のリスクがあります。そのため、理学療法は患者の全身状態を考慮しながら、適切な方法を選択する必要があります。

各理学療法の適応

  • 呼吸介助:努力性呼吸を緩和し、呼吸効率を高める目的で行われます。適切です。
  • 体位排痰法:分泌物の排出を促進し、肺炎や無気肺の予防に効果的です。適切です。
  • ベッドアップ:上体を起こすことで横隔膜の動きを助け、呼吸負荷を軽減します。人工呼吸器管理中の患者には特に有効です。適切です。
  • 関節可動域運動:長期臥床による関節拘縮の予防を目的とします。患者の全身状態に合わせて安全に実施可能です。適切です。
  • 徒手的抵抗運動:筋力強化が目的の運動であり、患者に強い負荷がかかります。呼吸状態が不安定で、努力性呼吸を呈している患者には不適切です。

選択肢の解説

  1. 呼吸介助(適切)
    • 呼吸筋の過剰な負担を軽減し、呼吸効率を向上させるため、必須の介入です。人工呼吸器管理中でも適用されます。
  2. 体位排痰法(適切)
    • 体位を利用して痰の排出を促進する方法です。分泌物が貯留しやすいCOPD患者では、二次的合併症の予防に重要です。
  3. ベッドアップ(適切)
    • 上体を起こすことで、横隔膜を効率的に使用でき、呼吸が楽になります。人工呼吸器使用中でも安全に実施可能です。
  4. 関節可動域運動(適切)
    • 長期臥床による関節拘縮を予防するため、全身状態に応じて安全に実施可能です。適切な理学療法です。
  5. 徒手的抵抗運動(不適切)
    • 筋力強化が目的の運動であり、負荷が高いため、努力性呼吸を呈する患者には不適切です。この状態では身体への負担を最小限に抑える介入が求められます。

ワンポイントアドバイス

急性増悪中のCOPD患者では、呼吸を補助する手法合併症を予防する軽負荷の運動が基本です。一方で、徒手的抵抗運動のような高負荷運動は避けるべきです。患者の状態に合わせた理学療法を選択することが重要です。