第54回

第54回理学療法士国家試験 午前問題16

42歳の男性。スキーの滑走中に転倒し、腕神経叢の図に示す部位を損傷した。前腕外側橈側と手の掌側の母指から環指に感覚鈍麻がある。筋力低下をきたす筋はどれか。2つ選べ。

  1. 円回内筋
  2. 三角筋
  3. 小指外転筋
  4. 上腕三頭筋
  5. 上腕二頭筋

解答解説

正解は1. 円回内筋5. 上腕二頭筋です。

解説

腕神経叢の図に示された損傷部位は、外側神経束(C5~C7)です。これにより、以下の特徴的な症状が生じます:

  1. 感覚鈍麻
    • 外側神経束に由来する筋皮神経と正中神経が障害されます。
    • 感覚障害の部位は、前腕外側橈側手掌側の母指から環指(正中神経支配領域)に一致します。
  2. 筋力低下
    • 外側神経束に含まれる筋皮神経と正中神経により支配される筋が影響を受けます。具体的には:
      • 筋皮神経:上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋
      • 正中神経:円回内筋、橈側手根屈筋、長母指屈筋、浅指屈筋など

これらの情報から、筋力低下が生じる筋を選択します。

選択肢の解説

  1. 円回内筋(正解)
    • 円回内筋は、正中神経(C6~C7)によって支配されています。外側神経束が損傷されると正中神経が影響を受け、円回内筋の筋力低下が生じます。
  2. 三角筋(誤り)
    • 三角筋は腋窩神経(後神経束由来、C5~C6)によって支配されます。外側神経束の損傷とは無関係で、筋力低下は生じません。
  3. 小指外転筋(誤り)
    • 小指外転筋は尺骨神経(C8~T1)によって支配されます。尺骨神経は内側神経束から分岐するため、外側神経束の損傷では影響を受けません。
  4. 上腕三頭筋(誤り)
    • 上腕三頭筋は橈骨神経(後神経束由来、C6~C8)によって支配されます。外側神経束の損傷とは無関係で、筋力低下は生じません。
  5. 上腕二頭筋(正解)
    • 上腕二頭筋は、筋皮神経(C5~C6)によって支配されています。外側神経束が損傷されると筋皮神経が影響を受け、上腕二頭筋の筋力低下が生じます。

ワンポイントアドバイス

外側神経束の損傷では、筋皮神経と正中神経が障害されるため、上腕二頭筋や円回内筋が特に影響を受けます。神経の支配領域や感覚障害の部位を基に、責任神経を明確に特定することが重要です。損傷部位が異なると支配される筋も変わるため、腕神経叢の構造をしっかり理解しておきましょう。