第54回

第54回理学療法士国家試験 午前問題13

82歳の女性。転倒して右股関節痛を訴えた。疑うべき疾患はどれか。

  1. 股関節脱臼
  2. 坐骨骨折
  3. 大腿骨近位部骨折
  4. 恥骨結合離開
  5. 恥骨骨折

解答解説

正解は3. 大腿骨近位部骨折です。

解説

転倒後の高齢者が股関節痛を訴える場合、最も疑うべき疾患は大腿骨近位部骨折(特に大腿骨頸部骨折や転子部骨折)です。この疾患は骨粗鬆症を背景としていることが多く、高齢者では非常に頻度が高い外傷性骨折の一つです。

提示されたX線画像では、右大腿骨近位部に不整な骨折線が見られます。この所見と症状から、大腿骨近位部骨折が強く疑われます。

症状と所見

  • 症状:転倒後の股関節痛、患側の下肢の短縮および外旋変形が特徴的です。
  • 画像所見:大腿骨頸部や転子部に骨折線を認め、骨折部位の不整が確認されます。

選択肢の解説

  1. 股関節脱臼(誤り)
    股関節脱臼は通常、高エネルギー外傷(交通事故など)によることが多く、高齢者の単純な転倒で発生することは稀です。また、脱臼では関節がずれるため、画像で骨頭の位置が異常になるのが特徴ですが、この画像では股関節の位置が正常です。
  2. 坐骨骨折(誤り)
    坐骨骨折は、通常、骨盤全体への強い外力が加わった場合に発生します。この画像には坐骨部に明らかな骨折線は認められず、転倒時の力の加わり方からも可能性は低いです。
  3. 大腿骨近位部骨折(正解)
    高齢者の転倒による股関節痛で最も多い疾患です。画像で確認される右大腿骨近位部の骨折線が診断を支持します。
  4. 恥骨結合離開(誤り)
    恥骨結合離開は、骨盤に対して前後方向の強い圧力がかかった場合に発生します(例:出産時や重度の骨盤外傷)。この画像には恥骨結合部の離開所見は見られません。
  5. 恥骨骨折(誤り)
    恥骨骨折は、骨盤の一部に外力が加わった場合に発生します。この画像には恥骨部に骨折線が確認されないため、該当しません。

ワンポイントアドバイス

高齢者の転倒後に股関節痛を訴えた場合、大腿骨近位部骨折を最優先で疑う必要があります。骨粗鬆症がリスク因子であり、適切な治療が行われない場合には、長期臥床による二次的な合併症(肺炎、褥瘡など)を招く可能性が高いです。早期診断と治療が重要です。