第54回

第54回理学療法士国家試験 午前問題12

70歳の男性。脳梗塞による右片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅱ、下肢Ⅲ。下肢の随意運動は共同運動がわずかに認められる程度である。歩行はT字杖にて室内は自立している。ADL指導で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ベッド上で起き上がる
  2. 浴槽に入る
  3. シャツを着る
  4. 床から立ち上がる
  5. 階段を上る

解答解説

正解は1. ベッド上で起き上がる3. シャツを着るです。

解説

患者の状況から、ADL指導の選択肢を検討するポイントは以下の通りです:

  • Brunnstrom法ステージ
    • 上肢Ⅱ:随意運動がほとんどなく、共同運動が主体である状態。片手での器用な動作は難しいが、補助動作は可能。
    • 下肢Ⅲ:随意運動が共同運動の範囲内でわずかに可能。立ち座りや体重移動はある程度できるが、複雑な動作は困難。
  • T字杖を使用して室内歩行が自立:ある程度の下肢機能と体幹バランスを有していると考えられる。

これらの状況を踏まえ、各選択肢を詳しく検討します。

選択肢の解説

  1. ベッド上で起き上がる(正解)
    ベッド上での起き上がり動作は、片麻痺があっても体幹や下肢を活用することで可能です。特に、下肢のBrunnstromステージⅢであれば、体幹と下肢の動きを組み合わせた動作が指導可能です。この動作はADLの基本であり、リハビリテーションの中で積極的に指導されます。
  2. 浴槽に入る(誤り)
    浴槽への出入りは、上肢のサポートが必要です。しかし、上肢ステージⅡの状態では支えとしての十分な機能を果たせず、浴槽内での動作は安全性を欠くため、適切な指導内容とはいえません。
  3. シャツを着る(正解)
    上肢ステージⅡでも、麻痺のない側を主に使用し、麻痺側を補助的に利用することで衣服の着脱が可能です。患者の残存機能を活用した適切な指導が行えます。シャツを着る動作は日常生活に不可欠であり、リハビリの重要な課題です。
  4. 床から立ち上がる(誤り)
    床からの立ち上がり動作は、体幹および両下肢の強い筋力と上肢の支えが必要です。この患者は下肢ステージⅢのため、体幹や下肢の協調運動が不十分であり、安全性を考慮すると指導には適していません。
  5. 階段を上る(誤り)
    階段昇降は、片麻痺がある場合には高い筋力とバランス能力が求められます。この患者の状況(下肢ステージⅢ、上肢ステージⅡ)では、階段昇降は負担が大きく、ADL指導として適切ではありません。

ワンポイントアドバイス

片麻痺患者のADL指導では、残存機能を最大限活用できる動作を優先的に選択します。特に、衣服の着脱やベッド上での起き上がりなど、日常生活で頻繁に行う基本的な動作を目標にしましょう。また、麻痺のない側を積極的に使用する方法を指導することがポイントです。