45歳の男性。会社の事務職として働いていたが、自転車運転中に自動車にはねられ、びまん性軸索損傷を受傷した。身体機能に問題がなかったため、1か月後に以前と同じ部署である庶務に復職した。仕事を依頼されたことや仕事の方法は覚えているが、何から手を付ければ良いのか優先順位が付けられず、周囲の同僚から仕事を促されてしまう状況である。考えられるのはどれか。
- 記憶障害
- コミュニケーション障害
- 失行
- 失認
- 遂行機能障害
解答解説
正解は5. 遂行機能障害です。
解説
遂行機能障害は、計画を立て、目標を設定し、その目標に向かって適切な行動を取る能力が低下する障害です。この患者は、仕事の方法や依頼された内容を覚えている(記憶は保たれている)にもかかわらず、何を優先して取り組むべきか判断できず、仕事の進行に支障をきたしています。これらの特徴は、遂行機能障害の典型的な症状です。
遂行機能障害は、びまん性軸索損傷などによる前頭葉の損傷で発生することが多く、社会的な活動や仕事において大きな困難を伴います。
選択肢の解説
- 記憶障害(誤り)
記憶障害では、新しい情報を覚えられない、または以前の記憶を想起できないといった問題が生じます。しかし、問題文では「仕事を依頼されたことや仕事の方法を覚えている」とあり、記憶は保たれているため該当しません。 - コミュニケーション障害(誤り)
コミュニケーション障害では、言語理解や表出、対人関係における障害がみられます。患者が同僚とどのように会話しているかについて問題は記載されていないため、該当しません。 - 失行(誤り)
失行は、麻痺や感覚障害がないにもかかわらず、目的に沿った運動ができない障害です。患者が作業手順を覚えている点や身体機能に問題がない点から、失行ではないと判断できます。 - 失認(誤り)
失認は、感覚機能が正常であるにもかかわらず、対象物や刺激を認識できない障害です。仕事に関する手順や内容を覚えている点から、失認の可能性は低いです。 - 遂行機能障害(正解)
遂行機能障害では、優先順位の設定や計画の遂行が困難になります。この患者は、仕事の優先順位が付けられず、同僚に促される点が遂行機能障害の典型例です。
ワンポイントアドバイス
遂行機能障害は、仕事や日常生活での計画的な行動が難しくなる障害で、特に前頭葉の損傷で発生しやすいです。リハビリテーションでは、患者が取り組むべき課題を細かく分けて示すなどの環境調整や計画立案の訓練が有効です。