第55回

第55回理学療法士国家試験 午前問題17

55歳の女性。6年前に多発性硬化症と診断され、再発や寛解を繰り返し、3回の入院歴がある。現在は症状が落ち着いており、訪問理学療法で屋外歩行練習が実施されている。その際、理学療法士は運動強度を軽度から中等度とし、かつ、外気温の高い時間帯を避けて実施するなどに留意している。この理由として関係するのはどれか。

  1. Barré徴候
  2. Horner徴候
  3. Lhermitte徴候
  4. Tinel徴候
  5. Uhthoff徴候

解答解説

正解は5. Uhthoff徴候です。
Uhthoff徴候とは、多発性硬化症の患者で体温が上昇することにより一時的に神経症状が悪化する現象を指します。運動や外気温の上昇が誘因となり、筋力低下、しびれ、視覚障害などの症状が増悪します。これを防ぐため、運動強度を軽度から中等度に調整し、高温環境を避けることが重要です。

各選択肢の解説

  1. Barré徴候
    Barré徴候は、軽度の片麻痺を診断するための徴候で、患者が仰臥位で上下肢を挙げた際、麻痺側の四肢が下降する現象です。 運動中の体温上昇や多発性硬化症との関連はなく、不適切です。
  2. Horner徴候
    Horner徴候は、交感神経の障害により、眼瞼下垂、縮瞳、発汗減少などが生じる現象です。 多発性硬化症や体温管理とは関係しません。
  3. Lhermitte徴候
    Lhermitte徴候は、頸部を屈曲させた際に電撃痛が脊柱から四肢にかけて走る現象です。 多発性硬化症に関連する徴候の一つですが、運動中の体温管理とは直接関係がありません。
  4. Tinel徴候
    Tinel徴候は、神経の損傷部位を叩くと末梢部にしびれやチクチクした感覚が生じる現象です。 主に末梢神経障害の評価に用いられるもので、本ケースとは関係がありません。
  5. Uhthoff徴候
    正解です。Uhthoff徴候は体温上昇による神経症状の一時的悪化を指し、多発性硬化症患者のリハビリテーションにおいて重要な配慮事項です。 運動強度や外気温に注意する理由として最も適切です。

ワンポイントアドバイス

多発性硬化症患者では、体温上昇が神経伝達の悪化を引き起こし、症状を増悪させることがあります。運動強度を軽度から中等度に調整し、涼しい時間帯や環境での練習を心掛けることが大切です。また、運動後は体温を下げるための休息や冷却も効果的です。