第55回

第55回理学療法士国家試験 午前問題16

60歳の女性。脊髄小脳変性症。四肢体幹の運動失調で座位保持が困難であったが、6週間の座位保持練習を行い、端座位は上肢で支持しなくても保持できるようになった。今後行うバランス能力改善の運動療法として最も適切なのはどれか。

解答解説

正解は3. 端座位での重心移動練習です。
脊髄小脳変性症における運動失調では、バランス能力の改善が重要です。端座位保持が可能となった患者に対しては、次の段階として重心移動を練習することで、バランス能力をさらに高めることができます。端座位での重心移動練習は、患者の安定性を維持しつつ、体幹とバランス機能を効率的に強化する適切な運動療法です。

各選択肢の解説

  1. セラピーボール上座位で上股下肢の拳上
    セラピーボール上での練習は不安定要素が高く、バランスが著しく低下している患者にとっては危険性が伴います。 現時点では過度に難易度の高い課題であり、不適切です。
  2. 端座位からの立ち上がり練習
    立ち上がり練習は筋力やバランスを向上させる目的で行いますが、端座位での重心移動が安定していない段階では早すぎます。 重心移動が適切にできるようになった後の課題として設定されるべきです。
  3. 端座位での重心移動練習
    正解です。端座位での重心移動練習は、現在のバランス能力に適合した課題であり、体幹の安定性やバランスを強化する基本的な訓練です。 徐々に負荷を調整しながら、バランス能力を向上させるのに適した練習です。
  4. 片膝立ち位での上股拳上
    片膝立ち位は体幹の筋力とバランスがある程度改善してから行う課題です。 現在の端座位レベルでは難易度が高すぎ、不適切です。
  5. 立位で不安定板を用いた荷重練習
    不安定板を用いた練習は高度なバランス能力を必要とするため、現段階では不適切です。 患者のレベルに合わせて、安全性を考慮した課題設定が必要です。

ワンポイントアドバイス

脊髄小脳変性症患者のリハビリでは、段階的なバランス練習が重要です。端座位での重心移動練習は、バランス能力向上の基本的なステップであり、安全かつ効果的に進められる課題です。患者の能力に応じて負荷を調整し、次のステップに備えましょう。