32歳の女性。2週間前に上気道炎を発症し、数日前から四肢末端の異常感覚を自覚した。その後、徐々に四肢の脱力を認めた。Guillain-Barré症候群と診断され、直ちにγ-グロブリン大量静注療法を開始した。入院時の四肢筋力はMMTで段階3であったが、入院3日後には顔面筋麻痺と構音・嚥下障害が出現し、翌日には痰が多く呼吸困難が出現したため、気管挿管され人工呼吸器管理となった。四肢筋力は近位筋で段階2、その他は段階1〜2に低下している。現時点で優先される治療はどれか。
- 機能的電気刺激
- 筋力増強運動
- 座位練習
- 自発呼吸練習
- 排痰練習
解答解説
正解は5. 排痰練習です。
Guillain-Barré症候群は急性発症の末梢神経障害で、呼吸筋や嚥下筋の麻痺が進行しやすい疾患です。現在、患者は気管挿管下で人工呼吸管理が行われており、痰の貯留による呼吸困難が問題となっています。そのため、最優先すべきは排痰練習(吸引や体位ドレナージ、叩打法など)を通じて気道の確保を図ることです。これにより、生命の危機を回避し、呼吸機能の維持が可能になります。
各選択肢の解説
- 機能的電気刺激
機能的電気刺激(FES)は筋力維持や筋再教育のために用いますが、現時点での最優先課題は呼吸困難の改善です。 排痰や呼吸管理が優先されるため、不適切です。 - 筋力増強運動
筋力増強運動は筋力低下への対策として有用ですが、Guillain-Barré症候群の急性期では筋疲労を避けることが重要です。 現段階では不適切であり、生命維持が優先されます。 - 座位練習
座位練習は離床訓練として適切ですが、呼吸状態が不安定で痰の貯留が多い現状では優先度が低いです。 呼吸機能を改善してから取り組むべきです。 - 自発呼吸練習
自発呼吸練習は人工呼吸器離脱を目指す段階で有効ですが、現状は気道確保と排痰が優先されるため、まだ適切な時期ではありません。 - 排痰練習
正解です。排痰練習は、痰の貯留や呼吸困難を改善し、気道を確保するために最優先されます。 吸引、体位ドレナージ、叩打法などを組み合わせて行い、呼吸機能を安定化させます。
ワンポイントアドバイス
Guillain-Barré症候群では、急性期における呼吸機能の管理が最優先事項です。特に人工呼吸器管理中の患者では、痰の貯留による気道閉塞のリスクが高いため、排痰の実施が不可欠です。また、急性期に無理な運動負荷をかけることは症状の悪化を招く可能性があるため注意しましょう。