第55回

第55回理学療法士国家試験 午前問題14

65歳の男性。変形性頸椎症。数年前から肩こりがあり、数か月前から頸部伸展時に右手の母指にしびれが出現し、右上肢のだるさと脱力感を自覚するようになった。下肢の症状やバランス不良はみられない。右上肢において筋力低下が最も生じやすいのはどれか。

  1. 三角筋
  2. 上腕三頭筋
  3. 上腕二頭筋
  4. 尺側手根屈筋
  5. 長橈側手根伸筋

解答解説

正解は5. 長橈側手根伸筋です。
変形性頸椎症による神経根障害が疑われます。右手母指のしびれや脱力感、頸部伸展での症状増悪は、C6神経根の障害を示唆しています。長橈側手根伸筋はC6神経根に支配されており、C6神経根障害ではこの筋肉に筋力低下が生じやすくなります。 また、母指の感覚障害や上肢のだるさといった症状もC6神経根障害の典型的な所見です。

各選択肢の解説

  1. 三角筋
    三角筋は主にC5神経根に支配されています。 C6神経根障害ではなくC5の障害で筋力低下が生じる可能性が高いため、この選択肢は適切ではありません。
  2. 上腕三頭筋
    上腕三頭筋は主にC7神経根に支配されています。 本患者の症状はC6神経根障害が示唆されるため、この筋肉には筋力低下は生じにくいです。
  3. 上腕二頭筋
    上腕二頭筋はC5およびC6神経根に支配されています。 C6神経根障害による筋力低下は生じる可能性がありますが、長橈側手根伸筋がより特異的に影響を受けるため、この選択肢は不正解です。
  4. 尺側手根屈筋
    尺側手根屈筋は主にC8神経根に支配されています。 C6神経根障害が疑われる本患者の症状とは一致しません。
  5. 長橈側手根伸筋
    正解です。長橈側手根伸筋はC6神経根に支配されており、C6神経根障害ではこの筋肉の筋力低下が典型的に生じやすくなります。 患者の症状と一致しています。

ワンポイントアドバイス

頸椎症に伴う神経根障害では、症状の出現部位からどの神経根が障害されているかを特定することが重要です。C6神経根障害では、母指のしびれ、上肢のだるさ、長橈側手根伸筋や上腕二頭筋の筋力低下が特徴的です。 試験では感覚・筋力・反射の組み合わせで診断を行う問題が頻出するため、各神経根の支配領域を覚えておきましょう。