74歳の男性。肺尖部がんによる腕神経叢への直接浸潤により環指・小指〜前腕中央・内側にかけて痛覚過敏を訴えている。腕神経叢への浸潤部位はどれか。
- C7神経根
- C8神経根
- 下神経幹
- 外側神経束
- 後神経束
解答解説
正解は3. 下神経幹です。
環指、小指および前腕の中央から内側にかけての感覚は、C8神経根およびT1神経根が支配しています。これらの神経根が合流して形成されるのが腕神経叢の「下神経幹」であり、肺尖部がんによる浸潤部位として典型的です。 肺尖部がん(パンコース腫瘍)は、しばしば腕神経叢の下部に直接浸潤し、特徴的な感覚障害や痛覚過敏を引き起こします。
各選択肢の解説
- C7神経根
C7神経根は、中指を含む手の背側および前腕の外側を支配しています。 本症例で訴えられている「環指・小指〜前腕中央・内側」の感覚異常とは一致しません。 - C8神経根
C8神経根は、環指・小指および前腕の内側を支配しています。 ただし、下神経幹はC8神経根とT1神経根で構成され、肺尖部がんによる浸潤部位としては、より包括的な下神経幹が正解です。 - 下神経幹
正解です。下神経幹はC8神経根とT1神経根が合流して形成され、環指、小指、前腕内側の感覚を支配する神経を含みます。 肺尖部がんによる直接浸潤部位として非常に典型的です。 - 外側神経束
外側神経束は上神経幹と中神経幹から構成され、筋皮神経や正中神経の一部を含みます。 感覚支配は主に前腕の外側で、本症例の感覚異常部位には一致しません。 - 後神経束
後神経束はすべての神経幹(上・中・下)の後枝から構成され、腋窩神経や橈骨神経を含みます。 これらは主に上肢の背側(伸筋群)を支配し、本症例の感覚異常とは異なります。
ワンポイントアドバイス
肺尖部がん(パンコース腫瘍)は、腕神経叢下部への浸潤や隣接する交感神経への影響によるホルネル症候群が特徴的です。感覚異常の分布と支配神経を正確に関連付けて、下神経幹が影響を受けやすいことを覚えておきましょう。