75歳の男性。身長170cm、体重48kg、BMI16.6。約10年前から呼吸困難が出現し自宅近くの医院で加療していた。徐々に呼吸困難感が増悪してきており、50m程度の連続歩行で呼吸困難感のため休息が必要である。動脈血ガス分析 PaO2 65 Torr、PaCO2 48 Torr、肺機能検査 %VC 81%、FEV1% 31% であった。患者の胸部エックス線写真D別冊No.2Hを別に示す。
7.予測されるフローボリューム曲線として最も適切なのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解答解説
正解は5. ⑤です。
患者は慢性的な呼吸困難と進行性の症状を呈し、肺機能検査でFEV1%(1秒率)が31%と著しく低下しています。このことから重症の閉塞性換気障害が示唆されます。⑤のフローボリューム曲線は、閉塞性障害の典型であり、最大呼気流量が低下し、吸気と呼気の曲線が全体的に小さく扁平化している特徴があります。
各選択肢の解説
- ①
この曲線は正常のフローボリューム曲線を示しています。患者はFEV1%が31%と非常に低く、正常曲線ではありません。 - ②
この曲線は軽度の拘束性障害を示唆する形状です。拘束性障害では肺活量が減少する一方、呼気流速は保たれるため、患者の状況(閉塞性換気障害)には該当しません。 - ③
この曲線は重度の拘束性障害を示唆します。曲線が小型化し、尖った形状となる点が特徴です。拘束性障害ではなく閉塞性障害が診断されている本患者には該当しません。 - ④
この曲線は軽度の閉塞性障害に見られる形状です。呼気流速の低下が軽度に示されている一方で、FEV1%が31%と重度の低下を示す本患者には適合しません。 - ⑤
正解です。この曲線は重度の閉塞性障害を示す典型的な形状です。呼気流量が顕著に低下しており、曲線の吸気部分と呼気部分が全体的に扁平化しているのが特徴です。本患者のFEV1%の値や症状に合致します。
ワンポイントアドバイス
閉塞性換気障害の特徴は、1秒率(FEV1%)が低下し、フローボリューム曲線で呼気流量が顕著に低下する点です。COPD(慢性閉塞性肺疾患)などが代表的な疾患です。 フローボリューム曲線の形状を正確に読み取れるよう、正常、拘束性障害、閉塞性障害の違いを押さえましょう。
8.この患者の運動療法を中止すべき状態として最も適切なのはどれか。
- SpO2 82%
- 呼吸数 22/分
- 心拍数 105/分
- 修正 Borg 指数
- 収縮期血圧が安静時より20mmHg上昇
解答解説
正解は1. SpO2 82%です。
運動療法中のSpO2(経皮的酸素飽和度)が88%以下に低下した場合、運動療法を中止することが推奨されています。患者のSpO2が82%まで低下した場合、低酸素血症が進行している可能性があり、速やかな中止が必要です。低酸素状態が続くと、組織の酸素供給が不足し、生命の危機に陥る可能性があります。
各選択肢の解説
- SpO2 82%
正解です。SpO2が88%以下になると運動療法を中止すべきとされています。この患者の82%は基準を大幅に下回っており、低酸素血症のリスクが高いため運動療法を直ちに中止する必要があります。 - 呼吸数 22/分
正常な呼吸数は12~20回/分程度ですが、運動中はある程度の増加が許容されます。22回/分程度は軽度の増加であり、運動療法を中止する必要はありません。 - 心拍数 105/分
安静時の心拍数が60~100回/分であることを考えると、105回/分は軽度の増加にすぎません。運動強度が適切である可能性が高く、中止の必要はありません。 - 修正 Borg 指数
修正Borg指数(RPE)は運動時の主観的な負荷感を評価しますが、具体的な数値が記載されていません。RPEが運動療法中止の目安となる17(非常にきつい)以上であれば注意が必要ですが、指数の具体的な記述がないため、中止の判断材料にはなりません。 - 収縮期血圧が安静時より20mmHg上昇
運動中の血圧は生理的に上昇するため、収縮期血圧が安静時より20mmHg程度の上昇は通常の範囲内です。ただし、異常な上昇(例えば収縮期血圧が200mmHg以上)や異常な低下があれば中止の判断が必要です。
ワンポイントアドバイス
運動療法中に注意すべき指標には、SpO2、心拍数、呼吸数、血圧、そして患者の主観的負担感(Borg指数など)が含まれます。SpO2が88%以下に低下した場合は速やかな中止が推奨されます。 他の指標についても基準値を明確に理解しておきましょう。