第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題20

80歳の女性。脳血管障害発症後5年、要介護2。杖歩行は自立しているが、転倒予防を目的に通所リハビリテーションでの理学療法が開始された。転倒リスクの評価として適切なのはどれか。

  1. FBS
  2. KPS〈Karnofsky performance scale〉
  3. PGCモラールスケール
  4. SIAS
  5. WCST

解答解説

正解は1.FBSです。

FBS(Functional Balance Scale)は、日常生活におけるバランス能力を評価するスケールであり、特に転倒リスクの評価に有用です。脳血管障害後の高齢者においてバランス能力を評価し、転倒予防に役立てることができます。本症例では、転倒リスクを評価する目的に適しており、適切な選択肢です。

選択肢の解説

  1. FBS(Functional Balance Scale)
    バランス能力を評価するスケールで、さまざまな動作におけるバランスの保持能力を定量化します。高齢者や脳卒中後患者の転倒リスクの評価に有用で、転倒予防のリハビリ計画にも役立ちます。正解です。
  2. KPS〈Karnofsky Performance Scale〉
    全身状態や日常生活動作の制限度を評価するスケールで、主にがん患者や重症疾患患者のQOL(生活の質)を測定する際に使用されます。本症例では転倒リスクの評価目的ではないため、適切ではありません。この選択肢は誤りです。
  3. PGCモラールスケール
    高齢者の心理的な満足感や幸福感を測定するスケールです。モラール(士気)や精神的健康状態を評価するものであり、身体的なバランスや転倒リスクの評価には使用されません。この選択肢は誤りです。
  4. SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)
    脳卒中後の運動麻痺や感覚障害、協調性障害などを評価するためのスケールです。患者の障害の程度を測定するのには有用ですが、転倒リスクを評価するスケールではありません。この選択肢は誤りです。
  5. WCST(Wisconsin Card Sorting Test)
    実行機能(問題解決能力や認知の柔軟性)を評価する神経心理検査であり、主に認知機能障害の評価に用いられます。転倒リスクの直接的な評価には適していません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

高齢者や脳卒中後患者の転倒リスクを評価する際には、FBSやBergバランススケール(BBS)、Timed Up and Go Test(TUG)など、バランス能力に焦点を当てた評価方法が適切です。転倒予防の計画を立てる際には、こうしたスケールを活用してリスクを定量化し、リハビリの方向性を明確にすることが重要です。