第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題19

74歳の女性。6か月前に左被殻出血を発症して、軽度の右片麻痺を呈している。くしを歯ブラシのように使おうとしたり、スプーンの柄に食物を乗せようとする行動がみられた。この患者の症状はどれか。

  1. 観念失行
  2. 構成失行
  3. 着衣失行
  4. 観念運動失行
  5. 肢節運動失行

解答解説

正解は1.観念失行です。

観念失行は、物の使い方を理解する能力が障害される症状を指します。この患者のように「くしを歯ブラシのように使おうとする」や「スプーンの柄に食物を乗せようとする」といった行動は、物の使用目的を誤っている典型例です。この症状は、主に頭頂葉やその関連するネットワークの障害で見られます。

選択肢の解説

  1. 観念失行
    物の使用に関する理解が障害され、物を正しく使えなくなる症状を指します。たとえば、歯ブラシやくしなど、目的が明確な物を誤って使用する行動が特徴的です。本症例に該当します。正解です。
  2. 構成失行
    形や構造を正しく認識して再現する能力が障害される症状です。たとえば、図形を模写したり積み木を組み立てる作業ができなくなるのが特徴です。本症例では、物の使い方の問題であり、構成失行ではありません。この選択肢は誤りです。
  3. 着衣失行
    衣服を着る動作が障害され、服を裏返しに着たり、腕を通すべき部分に足を通そうとするなどの問題が生じます。本症例は衣服に関する問題ではないため、この選択肢は誤りです。
  4. 観念運動失行
    身振りや動作のプランニングが障害され、単純な指示や動作模倣が困難になる症状です。物を使用する際の目的は理解しているものの、動作が適切に行えない状態を指します。本症例では、物の使用目的そのものを誤っているため、この選択肢は誤りです。
  5. 肢節運動失行
    四肢の運動における協調性が障害される症状で、単純な動作がうまくできなくなる状態です。本症例では、動作そのものは行えているため、この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

観念失行では、日常生活での物の使い方を観察することが診断の手がかりになります。理学療法や作業療法の場面では、患者が誤った使い方をしていても焦らず対応し、実際の動作を改善する訓練や、簡略化したタスクを通じて適切な使用方法を再学習させるアプローチが有効です。