32歳の男性。筋強直性ジストロフィー。手指を強く握ると筋強直のために開くのに時間がかかる。側頭部と頰部の筋萎縮と閉口障害を認める。筋力はMMTで頸部2、肩関節周囲2、肘関節周囲2、手指3、股関節周囲2、膝関節周囲2、足関節周囲1で、立位になればかろうじて短距離歩行可能である。労作時に動悸や呼吸苦の自覚はなく、SpO2の低下を認めない。正しいのはどれか。
- ROM運動は筋強直に抵抗して行う。
- 食事は咀嚼回数を減らす形態にする。
- 等尺性収縮による筋力増強は行わない。
- アンビューバックを活用した呼吸練習を行う。
- 下肢装着型の補助ロボット導入は有効でない。
解答解説
正解は2.食事は咀嚼回数を減らす形態にするです。
筋強直性ジストロフィーでは、咀嚼や嚥下筋の筋強直や筋力低下があるため、誤嚥を防ぐための食事形態の工夫が重要です。「咀嚼回数を減らす形態」とは、調理形態を軟らかい食事や一口サイズに整えることで咀嚼の負担を軽減する対応を指し、嚥下機能を考慮した適切な対応です。
選択肢の解説
- ROM運動は筋強直に抵抗して行う。
筋強直性ジストロフィーでは、筋強直に抵抗して無理にROM運動を行うと、筋肉や関節への負担が増加し、筋力低下や痛みを引き起こす可能性があります。ROM運動は筋強直に逆らわず、穏やかに行うべきです。この選択肢は誤りです。 - 食事は咀嚼回数を減らす形態にする。
筋強直や咀嚼筋力低下があるため、咀嚼回数を減らす工夫が必要です。具体的には、食事を軟らかく調理したり、切り分けて小さいサイズにすることで咀嚼の負担を軽減します。この選択肢は正解です。 - 等尺性収縮による筋力増強は行わない。
筋強直性ジストロフィーでは筋力低下があるものの、適切な範囲で等尺性収縮による筋力トレーニングが推奨されます。特に過負荷にならないように調整することが重要であり、「行わない」とするのは不適切です。この選択肢は誤りです。 - アンビューバックを活用した呼吸練習を行う。
本症例では、SpO2低下がなく、呼吸困難も認められていないため、アンビューバックを用いる呼吸練習の適応ではありません。現時点での呼吸リハビリは、腹式呼吸や呼吸筋ストレッチなど軽い方法が適しています。この選択肢は誤りです。 - 下肢装着型の補助ロボット導入は有効でない。
筋力が低下していても、短距離歩行が可能なため、下肢装着型の補助ロボットは有効な可能性があります。特に、安全性の向上や歩行能力の維持を目指して使用することが期待されます。この選択肢は誤りです。
ワンポイントアドバイス
筋強直性ジストロフィーでは、筋強直、筋力低下、咀嚼・嚥下障害への対応が重要です。食事形態の工夫や呼吸リハビリ、運動療法においては、過負荷を避けつつ患者に適した方法を選択することが求められます。また、補助具やロボットの活用など、新しい技術も積極的に検討しましょう。