第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題16

8歳の男児。脳性麻痺による痙直型四肢麻痺。背臥位姿勢と引き起こし時に図のように対応する。この児の車椅子の設定として適切なのはどれか。

  1. 座面を床面と平行にする。
  2. 平面形状の座面を使用する。
  3. 胸と骨盤をベルト固定する。
  4. 背もたれの高さは肩までとする。
  5. 背もたれの角度は床面と垂直に固定する。

解答解説

正解は3.胸と骨盤をベルト固定するです。

痙直型四肢麻痺のある児は、全身の筋緊張が高まりやすく、座位保持が不安定です。車椅子での適切な姿勢保持には、胸部と骨盤のベルト固定を行うことで、安定性を確保しつつ身体の歪みを防ぎ、上肢や頭部の活動をサポートすることが重要です。

選択肢の解説

  1. 座面を床面と平行にする。
    痙直型四肢麻痺の児には、筋緊張を軽減するために座面を後方に傾けた設定(ティルト)を用いることが効果的です。座面を床面と平行にすると、骨盤が後傾しやすく不安定な姿勢となるため、この選択肢は誤りです。
  2. 平面形状の座面を使用する。
    痙直型麻痺では、骨盤の傾きや側弯などが生じやすいため、座面は形状を調整したクッションやサポートを組み込むのが適切です。平面形状の座面は支持性が不足し、姿勢保持が難しくなる可能性があります。この選択肢は誤りです。
  3. 胸と骨盤をベルト固定する。
    胸部と骨盤をベルトで固定することで、体幹の安定性が高まり、姿勢保持が容易になります。この児のように全身の筋緊張が高い場合、体幹をしっかり固定することが重要です。正解です。
  4. 背もたれの高さは肩までとする。
    背もたれの高さは肩甲骨下部までに設定するのが一般的で、肩を覆ってしまうと上肢の自由な動きが制限される可能性があります。また、頭部保持が難しい場合にはヘッドサポートが必要です。この選択肢は誤りです。
  5. 背もたれの角度は床面と垂直に固定する。
    筋緊張を軽減し、体幹の安定性を高めるために背もたれの角度は後傾(通常10~15°)させるのが適切です。垂直に固定すると緊張が高まり、姿勢が不安定になる可能性があります。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

痙直型四肢麻痺の児に適した車椅子では、体幹を安定させるための固定具(ベルト)、後傾した座面や背もたれが重要です。胸部と骨盤を固定することで筋緊張を軽減し、座位姿勢を安定させることが可能です。また、座面や背もたれの形状は児の姿勢や筋緊張に合わせて調整する必要があります。