第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題6

57歳の男性。脳出血による左片麻痺。Brunnstrom法ステージ下肢Ⅲ。左下三頭筋のMAS〈modified Ashworth scale〉は2。平行棒内歩行時に左下肢の踵接地はみられず、内反尖足となる。また、左下肢立脚中期に膝のロッキングを認める。そこでダブルクレンザック(ロッド式)短下肢装具を作製した。誤っているのはどれか。

  1. 下半月の上縁の位置:腓骨頭
  2. 下半月の幅:4cm
  3. 下中央部における支柱と皮膚との距離:5mm
  4. 足継手の位置:内果下端と外果中央を結ぶ線
  5. 足関節の角度:底屈0°

解答解説

正解は1.下半月の上縁の位置:腓骨頭です。

ダブルクレンザック短下肢装具において、下半月の上縁は腓骨頭よりも2~3cm下に設定されるべきです。腓骨頭の直下には総腓骨神経が走行しており、直接的な圧迫を避ける必要があります。この設定が腓骨頭の位置そのものである場合、神経圧迫による障害を引き起こす可能性が高く、誤った仕様といえます。

選択肢の解説

  1. 下半月の上縁の位置:腓骨頭
    下半月の上縁を腓骨頭と同じ高さに設定すると、総腓骨神経への圧迫が生じる危険性があります。そのため、腓骨頭より2~3cm下に設定するのが基本です。この選択肢は誤りであり、正解です。
  2. 下半月の幅:4cm
    ダブルクレンザック装具では、下半月の幅は通常4cm程度に設定され、適切な支持面を確保しつつ装具の固定性を高める仕様です。この選択肢は正しい内容です。
  3. 下中央部における支柱と皮膚との距離:5mm
    装具の支柱と皮膚との距離は、適切な間隔を維持するために5mm程度に設定されます。これにより装具が過度に皮膚へ接触せず、皮膚トラブルを防止します。この選択肢は正しい内容です。
  4. 足継手の位置:内果下端と外果中央を結ぶ線
    足継手の位置は、内果下端と外果中央を結ぶ線上に設定するのが正しい位置です。これにより足部の正常な運動軸を再現し、装具による足関節の補助がスムーズに行えます。この選択肢は正しい内容です。
  5. 足関節の角度:底屈0°
    内反尖足がある場合、底屈0°(または軽度背屈)に設定することで踵接地を促し、正常な歩行パターンを補助することができます。この選択肢は正しい内容です。

ワンポイントアドバイス

短下肢装具では、装具の構造が解剖学的な位置関係を十分に考慮して設計される必要があります。特に、腓骨頭付近にある総腓骨神経への圧迫は、感覚障害や運動麻痺を引き起こすリスクがあるため、慎重な設計が求められます。装具の適正な位置関係をしっかり覚えておくことで、国家試験でも関連問題を解きやすくなります。