56歳の男性。頭痛と複視を自覚し脳神経内科を受診した。頭部MRIで右脳幹部に腫瘍性病変を指摘された。対座法で観察した眼球運動を図に示す。障害されている脳神経はどれか。
- 右動眼神経のみ
- 右滑車神経のみ
- 右外転神経のみ
- 右動眼神経と右滑車神経
- 右動眼神経と右外転神経
解答解説
正解は3.右外転神経のみです。
外転神経(第6脳神経)は外側直筋を支配しており、眼球を外側に動かす働きを担います。この患者では右眼が外転できておらず、右眼が内側偏位していることから、右外転神経が障害されていると判断されます。他の神経(動眼神経や滑車神経)に由来する運動異常はみられません。
選択肢の解説
- 右動眼神経のみ
動眼神経(第3脳神経)は上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋を支配し、眼瞼挙筋や瞳孔の収縮にも関与します。動眼神経が障害されると、眼瞼下垂、瞳孔散大、外側偏位が見られますが、この患者の症例では該当しません。正解ではありません。 - 右滑車神経のみ
滑車神経(第4脳神経)は上斜筋を支配し、眼球を内下方に動かす働きを持ちます。滑車神経の障害では、内下方への眼球運動が制限され、複視が生じますが、この患者にはその症状が確認されません。正解ではありません。 - 右外転神経のみ
外転神経(第6脳神経)は外側直筋を支配し、眼球を外側に動かす役割を持っています。外転神経が障害されると、眼球が内側に偏位し、外転が不可能となります。この患者の症例では右眼の外転ができておらず、内側偏位しているため、外転神経の障害が疑われます。正解です。 - 右動眼神経と右滑車神経
動眼神経と滑車神経が同時に障害される場合、複数の筋が機能不全となり、より広範囲の眼球運動障害が発生しますが、この患者では外転以外の眼球運動に異常は見られません。正解ではありません。 - 右動眼神経と右外転神経
動眼神経と外転神経が同時に障害されると、眼球の内外転や他の運動にも影響が生じますが、この患者の症例では右外転神経のみが障害されています。正解ではありません。
ワンポイントアドバイス
外転神経麻痺は、眼球が内側に偏位し、外転運動が制限されるのが特徴です。原因には脳幹部の病変や高血圧性小血管障害、腫瘍などが挙げられます。眼球運動の観察では、どの方向の運動が障害されているかを正確に判断し、支配筋と関連する脳神経を結びつけることが重要です。