第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題7

20歳の女性。転倒して左下腿骨骨折後、変形治癒となりその後手術が行われた。手術後翌日の単純エックス線(別冊No. 2)を別に示す。この患者に対する運動療法で正しいのはどれか。

  1. CPMを手術後1週から行う。
  2. 下肢伸展挙上運動を手術後1日から行う。
  3. 足関節の自動運動を手術後2週から行う。
  4. 大腿四頭筋セッティングを手術後1週から行う。
  5. 椅子座位での大腿四頭筋訓練(レッグエクステンション)を手術後1日から行う。

解答解説

正解は2.下肢伸展挙上運動を手術後1日から行うです。

この患者の手術後の管理において、術後早期における運動療法は、関節拘縮や筋萎縮を防ぎ、下肢の血行促進を図ることが重要です。下肢伸展挙上運動(Straight Leg Raising: SLR)は、術後早期(1日目)から安全に実施できる運動療法の一つです。これは患側膝関節や足関節への過度な負担をかけずに大腿四頭筋を動員し、筋力維持と血流改善に寄与します。

選択肢の解説

  1. CPMを手術後1週から行う。
    CPM(Continuous Passive Motion)は主に関節可動域改善の目的で行われますが、このケースでは手術部位が下腿骨骨折であり、骨折部の安定性を優先するため術後早期に行うことは適切ではありません。特にCPMは膝関節手術後に適用されることが多く、今回の症例とは適合しません。正解ではありません。
  2. 下肢伸展挙上運動を手術後1日から行う。
    下肢伸展挙上運動(SLR)は膝を伸展した状態で行う運動で、術後早期(手術翌日)から安全に実施可能です。この運動は骨折部に過剰な負荷を与えずに大腿四頭筋を刺激することで筋萎縮を予防し、血行促進や下肢機能の回復を促進します。正解です。
  3. 足関節の自動運動を手術後2週から行う。
    足関節の自動運動(足関節背屈・底屈運動など)は、手術翌日から行うことが可能です。早期の足関節運動は筋ポンプ作用を活性化し、血栓予防や循環改善に寄与します。手術後2週から行うと遅すぎるため、この選択肢は誤りです。
  4. 大腿四頭筋セッティングを手術後1週から行う。
    大腿四頭筋セッティング(Quad Setting)は、大腿四頭筋を等尺性収縮させる運動で、術後1日目から実施可能です。膝関節や骨折部に過剰な負荷をかけることなく大腿筋を刺激できるため、1週から行うという設定は遅すぎます。この選択肢は誤りです。
  5. 椅子座位での大腿四頭筋訓練(レッグエクステンション)を手術後1日から行う。
    レッグエクステンションは、大腿四頭筋の動的収縮を促す運動ですが、術後早期には膝関節や骨折部に過度な負荷をかける可能性があります。そのため、手術後1日目から行うことは不適切です。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

術後早期の運動療法では、血行促進や筋萎縮予防を目的とした安全な運動が優先されます。大腿四頭筋セッティングや足関節の自動運動は、術後1日目から実施できる基本的な運動療法です。また、SLRも術後早期に行うことができ、下肢機能回復に効果的です。運動のタイミングや負荷の程度を正確に把握することが重要です。