第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題32

松葉杖歩行を行うために必要な機能と上肢の筋との組合せで正しいのはどれか。

  1. 体重支持――上腕二頭筋
  2. 握り手の把持――橈側手根伸筋
  3. 脇当ての固定――大胸筋
  4. 松葉杖の前方への振り出し――肩甲下筋
  5. 握り手を握ったときの手関節の固定――浅指屈筋

解答解説

正解は3.脇当ての固定――大胸筋です。

松葉杖歩行では、脇当て部分を安定させるために、肩関節の内転筋群である大胸筋や広背筋が重要な役割を果たします。特に、体幹側へ引きつける力を発揮することで脇当ての位置を固定し、松葉杖の安定性を確保します。

選択肢の解説

  1. 体重支持――上腕二頭筋
    体重支持時に働くのは上腕三頭筋や肩甲帯周囲の筋群です。上腕二頭筋は肘関節屈曲に関与しますが、体重支持に大きく寄与する筋ではありません。この選択肢は誤りです。
  2. 握り手の把持――橈側手根伸筋
    握り手を把持する際に主に働くのは手指屈筋群(浅指屈筋、深指屈筋など)であり、橈側手根伸筋は手関節の背屈や橈屈に関与します。握り手の把持に直接的な関与はありません。この選択肢は誤りです。
  3. 脇当ての固定――大胸筋
    大胸筋は肩関節の内転や内旋を担う筋で、松葉杖の脇当てを体幹側に引きつけることで安定させる役割を果たします。この選択肢が正解です。
  4. 松葉杖の前方への振り出し――肩甲下筋
    松葉杖を前方に振り出す動作には三角筋や肩関節屈筋群が関与します。肩甲下筋は肩関節の内旋を担い、この動作に直接関与しません。この選択肢は誤りです。
  5. 握り手を握ったときの手関節の固定――浅指屈筋
    手関節の固定には、手関節屈筋群と伸筋群のバランスが必要です。浅指屈筋は主に手指の屈曲に関与し、手関節の固定には直接的に寄与しません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

松葉杖歩行では、以下のポイントを押さえておきましょう:

  • 体重支持:上腕三頭筋や肩甲帯周囲筋が重要。
  • 脇当ての固定:大胸筋や広背筋が働く。
  • 握り手の把持:浅指屈筋や深指屈筋が主に関与。
    松葉杖の安定性には、上肢と肩甲帯全体の筋が協調して働くことが必要です。それぞれの筋の役割を理解し、歩行動作との関係性を整理して覚えましょう。