第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題4

理学療法士が下肢を固定し、体幹の前屈を行わせた状態を図1に示す。次に図2のように固定位置を変更して体幹前屈を行わせたところ、体幹前傾角度に違いがみられた。この違いが生じた原因として、最も筋力低下が疑われる筋はどれか。

  1. 腹直筋
  2. 腸腰筋
  3. 大腿四頭筋
  4. ハムストリングス
  5. 前脛骨筋

解答解説

正解は3.大腿四頭筋です。

体幹の前屈運動では、股関節を固定するために大腿四頭筋が重要な役割を果たします。図1では、下肢全体が固定されているため、大腿四頭筋が関与しなくても前屈が可能ですが、図2では固定位置が変わり、大腿四頭筋の筋力が不足していると、股関節が安定せず、体幹前傾角度が低下します。そのため、大腿四頭筋の筋力低下が原因と考えられます。

選択肢の解説

  1. 1. 腹直筋
    腹直筋は体幹前屈運動の主動筋ですが、図1と図2の違いは股関節の安定性に関連するため、この筋の筋力低下が直接的な原因とはいえません。正解ではありません。
  2. 腸腰筋
    腸腰筋は股関節の屈曲筋ですが、図1と図2の違いは体幹前屈時の固定方法の変化によるものです。腸腰筋の筋力低下は体幹前屈角度の違いに直接影響しません。正解ではありません。
  3. 大腿四頭筋
    大腿四頭筋は膝の伸展筋で、股関節を安定させる役割も持っています。図2では膝が曲がらないように固定されていないため、大腿四頭筋の筋力低下があると体幹を安定させられず、前屈角度が低下します。よって、正解です。
  4. ハムストリングス
    ハムストリングスは股関節伸展筋であり、体幹前屈角度に影響を与える可能性はありますが、図2のように膝の固定位置が変わった場合の影響は少ないため、直接の原因とはいえません。正解ではありません。
  5. 前脛骨筋
    前脛骨筋は足関節の背屈筋であり、体幹前屈運動や股関節の安定性に直接関与しません。このため、図2の条件での体幹前屈角度の変化に影響を与えるとは考えにくいです。正解ではありません。

ワンポイントアドバイス

体幹前屈運動では、腹筋や股関節周囲の筋肉が連動して働きますが、固定位置が変化すると筋群の役割も変わります。大腿四頭筋は膝の伸展だけでなく、股関節を安定させる役割があるため、このような条件下では重要な筋として注目すべきです。固定方法による影響を理解することが、評価や問題解決につながります。