52歳の女性。起床時の頭痛と嘔気を主訴に脳神経外科を受診した。頭部造影MRI T1強調像(別冊No.4)を別に示す。頭蓋内腫瘍摘出術が予定されており、術前より理学療法が依頼された。神経症候として認める可能性が最も低いのはどれか。
- 失語
- 拮抗失行
- 情緒障害
- 注意障害
- 遂行機能障害
解答解説
正解は2(拮抗失行)です。
画像では、右前頭葉に明瞭な腫瘍が認められます。右前頭葉は主に遂行機能や注意、情緒の制御を担っており、これらの機能障害が関連する神経症状として出現する可能性があります。一方、「拮抗失行」は左頭頂葉が主に関連する症状であり、今回の病変部位から考えて認める可能性は低いと判断されます。
各選択肢の解説
- 失語
失語は主に左半球の優位半球障害に関連します。今回の病変は右前頭葉であるため失語の可能性は低いものの、稀に軽度の発話や言語運用の問題が出現することがあります。 - 拮抗失行
拮抗失行は左頭頂葉の障害で起こることが多いです。今回の病変部位(右前頭葉)とは関連がないため、最も可能性が低いと判断されます。 - 情緒障害
右前頭葉の障害では感情の制御が難しくなる場合があります。このため情緒不安定や意欲低下などの症状が出現する可能性があります。 - 注意障害
前頭葉障害に伴い、注意力の低下や集中力の欠如が出現する可能性があります。右前頭葉の病変においても関連する神経症状です。 - 遂行機能障害
前頭葉は遂行機能(計画・実行・問題解決など)の中枢であるため、右前頭葉病変では遂行機能障害が高頻度で認められます。
ワンポイントアドバイス
前頭葉の病変では、注意障害や遂行機能障害、情緒障害などが特徴的です。さらに、病変が右半球にある場合は感情の制御障害や注意の空間的偏り(半側空間無視など)に注意する必要があります。一方、失語や拮抗失行は主に左半球や左頭頂葉の障害と関連するため、出現頻度は低いです。