第57回

第57回理学療法士国家試験 午後問題64

酸塩基平衡で正しいのはどれか。

  1. 正常の動脈血のpHは6.4である。
  2. 嘔吐では代謝性アシドーシスになる。
  3. 過換気では呼吸性アルカローシスになる。
  4. 呼吸性アルカローシスでは尿は酸性になる。
  5. 代謝性アルカローシスではKussmaul呼吸がみられる。

解答解説

正解は3です。

過換気(呼吸数や呼吸量の増加)では、過剰な二酸化炭素(CO₂)の排出により血液中のCO₂濃度が低下します。その結果、炭酸が減少し、血液がアルカリ性に傾くため、呼吸性アルカローシスが起こります。

各選択肢の解説

  1. 正常の動脈血のpHは6.4である。
    正常の動脈血のpHは7.35〜7.45の範囲にあります。pHが6.4では生命維持が困難です。この選択肢は誤りです。
  2. 嘔吐では代謝性アシドーシスになる。
    嘔吐では胃液中の塩酸(HCl)が大量に失われるため、体内がアルカリ性に傾きます。このため、代謝性アルカローシスが起こります。この選択肢は誤りです。
  3. 過換気では呼吸性アルカローシスになる。(正解)
    正しい選択肢です。過換気によりCO₂が過剰に排出され、血液がアルカリ性に傾きます。これは典型的な呼吸性アルカローシスの病態です。
  4. 呼吸性アルカローシスでは尿は酸性になる。
    呼吸性アルカローシスでは、血液がアルカリ性に傾いた状態を補正するために、腎臓は尿中に重炭酸イオン(HCO₃⁻)を排出し、尿はアルカリ性になります。この選択肢は誤りです。
  5. 代謝性アルカローシスではKussmaul呼吸がみられる。
    Kussmaul呼吸(深く速い呼吸)は、代謝性アシドーシス(例:糖尿病性ケトアシドーシス)で見られる代償呼吸です。代謝性アルカローシスでは見られません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

酸塩基平衡の異常を区別する際、以下を整理して覚えましょう:

  • 呼吸性異常
    • 呼吸性アシドーシス:CO₂の蓄積(呼吸低下)。
    • 呼吸性アルカローシス:CO₂の排出過多(過換気)。
  • 代謝性異常
    • 代謝性アシドーシス:H⁺の増加(腎不全、乳酸蓄積など)。
    • 代謝性アルカローシス:H⁺の喪失(嘔吐、利尿薬など)。

補正機能(腎臓や呼吸の代償)も重要な判断材料です。