気管切開患者に対する痰の吸引で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ファインクラックル〈fine crackles・捻髪音〉を聴取したので吸引する。
2.無菌的な操作を行う。
3.成人の吸引圧は80 mmHg程度が推奨される。
4.吸引カテーテルの先端が気管分岐部に当たらない深さにとどめる。
5.吸引カテーテルを気道内でピストン運動させる。
解答解説
正しい選択肢は 2.無菌的な操作を行う と 4.吸引カテーテルの先端が気管分岐部に当たらない深さにとどめる です。
- 2.無菌的な操作を行う
気管切開部や気管内は感染リスクが高いため、痰の吸引では無菌的な操作が必要です。無菌手袋や無菌カテーテルを使用し、手指消毒を徹底するなど、感染予防に努めます。無菌操作を徹底することで、感染症リスクを減らし、安全な吸引が可能になります。 - 4.吸引カテーテルの先端が気管分岐部に当たらない深さにとどめる
吸引カテーテルを過度に挿入し、気管分岐部(気管支分岐部)に接触すると、反射的な咳や気道の損傷を引き起こす可能性があるため、気管分岐部に達しない適切な深さに留めることが重要です。必要最小限の挿入で、気道を刺激しないように注意します。
選択肢の解説
- ファインクラックル〈fine crackles・捻髪音〉を聴取したので吸引する
誤りです。**ファインクラックル(捻髪音)**は、末梢の肺胞や細気管支レベルで発生する音で、線維化や液体貯留(例:肺水腫、間質性肺炎など)によるものです。これは気道内に痰が貯留していることを直接示す音ではありません。痰の吸引が必要かどうかは、湿性ラ音(コースクラックル)や痰の量、咳の状態などで判断します。 - 無菌的な操作を行う
正解です。気管切開患者に対する痰の吸引では、感染を防ぐために無菌的な操作が不可欠です。無菌手袋やカテーテルの使用、手指消毒などを徹底し、感染リスクを最小限に抑えます。気管内は無菌状態が求められるため、無菌的な操作が推奨されます。 - 成人の吸引圧は80 mmHg程度が推奨される
誤りです。成人の適切な吸引圧は100~150 mmHgです。80 mmHgでは吸引圧が弱すぎて、効果的に痰を取り除けない可能性があります。吸引圧が弱すぎると、十分な吸引が行えないことがあるため、適切な吸引圧を設定することが大切です。なお、吸引圧が強すぎても気道を傷つけるリスクがあるため、推奨範囲内に設定することが重要です。 - 吸引カテーテルの先端が気管分岐部に当たらない深さにとどめる
正解です。吸引カテーテルを気管分岐部まで挿入すると、気道を傷つけたり、強い不快感や咳反射を引き起こすリスクがあります。そのため、気管分岐部に当たらない適切な深さにカテーテルを留めることが重要です。必要な範囲でのみカテーテルを挿入するよう心掛けます。 - 吸引カテーテルを気道内でピストン運動させる
誤りです。吸引カテーテルを気道内で前後に動かす「ピストン運動」を行うと、気道の粘膜を傷つけるリスクがあるため、避けるべきです。カテーテルを挿入後は、吸引圧をかけながら回転させて引き抜くのが推奨される方法です。ピストン運動は気道に余計な刺激を与え、不快感や損傷を引き起こす可能性が高いです。
ワンポイントアドバイス
気管切開患者の痰の吸引では、無菌的な操作、適切な吸引圧、そして気道を傷つけないためのカテーテル操作が重要です。また、痰の吸引が必要かどうかは、湿性ラ音や痰の量などの症状を基に判断し、ファインクラックルのような末梢の音では判断しないように注意します。