72歳の男性。脳梗塞による左片麻痺。座位姿勢と机上での検査結果を図に示す。
理学療法として誤っているのはどれか。
- 視覚探索課題を行う。
- 後頸部に振動刺激を行う。
- 車椅子の右側のブレーキレバーを延長する。
- 対象物が右へ偏倚するプリズム眼鏡をかけて練習する。
- 車椅子駆動時に進行方向の左側に注意するよう指導する。
解答解説
正解は3です。
この患者は左片麻痺に加え、右空間偏視(視覚無視)が疑われます。視覚無視では右側の刺激に注意が集中し、左側への注意が困難となります。したがって、右側のブレーキレバーを延長すると右側の注意がさらに強まり、左側への注意がますます低下する可能性があります。この対応は患者の状態を悪化させる可能性があり、不適切です。
各選択肢の解説
- 視覚探索課題を行う。
視覚無視のリハビリテーションでは、患者が積極的に左側へ注意を向けるような視覚探索課題を行うことが有効です。この選択肢は適切です。 - 後頸部に振動刺激を行う。
後頸部(主に左側)への振動刺激は、左側の注意喚起を促進する方法として有効です。特に視覚無視の改善に効果が期待されるため、この選択肢は適切です。 - 車椅子の右側のブレーキレバーを延長する。(正解)
誤った選択肢です。右側のブレーキレバーを延長すると、右側への注意がさらに集中し、左側への注意がますます減少する可能性があります。これは視覚無視の改善には不適切です。 - 対象物が右へ偏倚するプリズム眼鏡をかけて練習する。
プリズム眼鏡を使用することで、患者が意識的に左側に注意を向けるリハビリテーションが可能です。視覚無視の改善に効果が期待できる方法であり、この選択肢は適切です。 - 車椅子駆動時に進行方向の左側に注意するよう指導する。
視覚無視では患者が左側への注意を忘れることが多いため、進行方向の左側に注意を向けるよう指導することは非常に重要です。この選択肢は適切です。
ワンポイントアドバイス
視覚無視のリハビリテーションでは、患者の左側への注意を促すことが最も重要です。右側への注意が過剰になるような環境設定(例:右側のブレーキレバーの延長)は避けるべきです。振動刺激やプリズム眼鏡、視覚探索課題などの方法を組み合わせることで、リハビリ効果を高めることが期待されます。