75歳の男性。身長165 cm、体重60 kg。大動脈弁狭窄症。心房細動と一過性脳
虚血発作の既往があり、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を行っている。
NYHA分類ではclassⅠで、運動負荷試験で得られた嫌気性代謝閾値(AT)は17.5
mL/分/kgである。
この患者への生活指導で誤っているのはどれか。
- 抗凝固療法の服薬を継続する。
- 体重や血圧を日誌に付けて自己管理する。
- 自宅での生活活動は4 METsを上限とする。
- 下肢筋力のレジスタンストレーニングをする。
- 心肺運動負荷試験で得られたAT強度で運動する。
解答解説
正解は3です。
患者は経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を受けており、現在のNYHA分類はclassⅠ(心不全の症状なし)で、運動負荷試験で得られた嫌気性代謝閾値(AT)が17.5 mL/分/kgと良好な運動耐容能を示しています。この状態では、4 METsの活動制限は不要であり、患者の運動能力を十分に活かすため、より高い強度の活動も可能です。この選択肢は誤りです。
各選択肢の解説
- 抗凝固療法の服薬を継続する。
TAVI後の患者は、血栓形成リスクや心房細動の既往から、抗凝固療法の継続が必要です。服薬継続は適切な指導です。この選択肢は正しいです。 - 体重や血圧を日誌に付けて自己管理する。
体重や血圧の自己管理は、心不全や大動脈弁狭窄症の再発リスクを抑えるために重要です。日誌に記録する習慣は推奨されます。この選択肢は正しいです。 - 自宅での生活活動は4 METsを上限とする。(正解)
誤った選択肢です。患者のAT(17.5 mL/分/kg)は約5 METsに相当し、運動耐容能が良好であるため、4 METs以上の活動も安全に行えると考えられます。過度な制限は患者の身体機能を低下させる可能性があります。 - 下肢筋力のレジスタンストレーニングをする。
下肢筋力のレジスタンストレーニングは、運動能力の維持・向上に有効であり、心疾患患者においても推奨される介入です。安全性を考慮しながら適切な負荷で実施すべきです。この選択肢は正しいです。 - 心肺運動負荷試験で得られたAT強度で運動する。
AT強度での運動は心肺リハビリテーションにおいて推奨される方法です。この強度で運動することで、安全かつ効果的に心肺機能の改善が期待できます。この選択肢は正しいです。
ワンポイントアドバイス
患者の運動能力に基づいた適切な運動強度を設定することが重要です。AT値を基準に、患者の能力を十分に活かした指導を行い、過度な制限は避けるべきです。また、TAVI後の患者では心不全の再発リスクや血栓形成に注意しつつ、運動と自己管理を継続的にサポートする必要があります。