64歳の女性。右利き。脳梗塞。約か月前に左大脳に発症。現在は聴覚理解に
問題はないが、発語は非流暢かつ緩徐である。話す言葉の量は少なく、発語の際に
は多大な努力を要している。四肢の麻痺はみられない。
この患者への対応として正しいのはどれか。
- 患者の話す内容が文法的に誤っていれば医療者が即座に細かく修正する。
- 患者が「はい」「いいえ」で答えることができるように質問する。
- 医療者が口頭で説明をするときにはジェスチャーを交える。
- コミュニケーションエイドを導入する。
- 患者にメモをとるように指導する。
解答解説
正解は2です。
患者は発語が非流暢で緩徐であり、話す際に多大な努力を要しているため、運動性失語(ブローカ失語)の可能性が高いです。この場合、聴覚理解は比較的良好であるため、「はい」「いいえ」で答えられる簡単な質問形式にすることで、負担を軽減しつつコミュニケーションを円滑に行うことができます。
各選択肢の解説
- 患者の話す内容が文法的に誤っていれば医療者が即座に細かく修正する。
文法的な誤りを指摘すると、患者にとって過度な負担となり、コミュニケーション意欲を低下させる可能性があります。運動性失語の患者に対しては、内容が理解できる限り文法的な誤りを細かく修正しない方が望ましいです。この選択肢は誤りです。 - 患者が「はい」「いいえ」で答えることができるように質問する。(正解)
正しい選択肢です。運動性失語の患者は発語が難しいため、選択肢を限定した簡単な質問形式にすることで負担が軽減し、円滑なコミュニケーションが可能になります。この方法は患者にとっても医療者にとっても有効です。 - 医療者が口頭で説明をするときにはジェスチャーを交える。
ジェスチャーは聴覚理解に問題がある患者(例:感覚性失語)に有効ですが、本症例の患者は聴覚理解に問題がないため、必要性は高くありません。この選択肢は誤りです。 - コミュニケーションエイドを導入する。
コミュニケーションエイドは重度の言語障害がある場合に有効ですが、本症例では聴覚理解が良好であり、発語もある程度可能なことから必ずしも必要ではありません。この選択肢は誤りです。 - 患者にメモをとるように指導する。
運動性失語の患者は発語に努力が必要ですが、書字能力も同様に障害されている可能性があります。メモをとることを指導しても実行が難しい場合が多いため、この選択肢は適切ではありません。
ワンポイントアドバイス
運動性失語(ブローカ失語)では、発語困難を考慮して簡潔で具体的な質問を心がけることが重要です。また、患者のコミュニケーション努力を尊重し、ストレスを与えないようにすることが大切です。理解力が良好である点を活かし、負担を軽減する方法を選択しましょう。