第57回

第57回理学療法士国家試験 午後問題13

65歳の女性。左変形性股関節症。3年前からの左股関節痛に対して後方侵入法
で人工股関節置換術を受けた。術後のエックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。
手術後3週までの患側の理学療法で正しいのはどれか。

  1. 立ち上がり動作は股関節内旋位で行う。
  2. 術後翌日から等尺性筋力増強練習を開始する。
  3. 術後3日間はベッド上安静とする。
  4. 術後2週は股関節を45度以上屈曲しない。
  5. 術後3週は免荷とする。

解答解説

正解は2です。

人工股関節置換術(THA)の後方侵入法では、脱臼を予防するために特定の動作制限が必要です。一方で、術後翌日から等尺性筋力増強練習を行うことで、患側の筋力維持や血流促進、拘縮の予防を図ることが推奨されます。早期離床は術後合併症を防ぐ重要な要素です。

各選択肢の解説

  1. 立ち上がり動作は股関節内旋位で行う。
    股関節の内旋位は、後方侵入法で人工股関節置換術を受けた患者にとって脱臼リスクが高い動作です。立ち上がり動作では、股関節を中立位または軽い外旋位に保つ必要があります。この選択肢は誤りです。
  2. 術後翌日から等尺性筋力増強練習を開始する。(正解)
    正しい選択肢です。術後翌日から大腿四頭筋や臀筋の等尺性筋力増強練習を開始することで、患側筋力の維持と回復を促進し、関節の安定性を高めます。また、早期からのリハビリは血栓症予防にも役立ちます。
  3. 術後3日間はベッド上安静とする。
    現在のTHAリハビリテーションでは、術後早期から離床を進めることが推奨されています。術後3日間もベッド上安静を続けるのは不適切であり、合併症リスク(血栓症、廃用症候群)が高まります。この選択肢は誤りです。
  4. 術後2週は股関節を45度以上屈曲しない。
    後方侵入法では、屈曲90度以上、内旋、内転の組み合わせが脱臼のリスクを高めますが、45度までの屈曲を制限する必要はありません。通常は90度未満で動作を制限するため、この選択肢は誤りです。
  5. 術後3週は免荷とする。
    人工股関節置換術では、通常、術後すぐから部分荷重を開始することが可能です。免荷を長期間続けると、筋力低下や骨量減少が進行するため、術後3週で免荷を行う必要はありません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

人工股関節置換術後のリハビリでは、脱臼予防の動作指導(股関節屈曲90度以上、内旋、内転の回避)が最優先されます。一方で、早期離床と筋力増強練習が合併症の予防や機能回復を促進します。患者に合わせた計画的なリハビリが重要です。