治療前後の心電図(別冊No. 1)を別に示す。
治療の作用として正しいのはどれか。
- 不応期の短縮
- 心収縮力の増強
- 房室間の伝導の抑制
- 洞房結節の脱分極促通
- 心室筋の活動電位持続時間の延長
解答解説
正解は5です。
治療前後の心電図を見ると、治療後にはQT間隔が延長していることが分かります。QT間隔は心室筋の脱分極から再分極までの時間を反映しており、これは心室筋の活動電位持続時間が延長していることを示しています。この作用は、例えばクラスIII抗不整脈薬(アミオダロンなど)が持つ心電図上の変化として典型的です。
各選択肢の解説
- 不応期の短縮
不応期が短縮される場合、QT間隔は短くなるはずです。しかし、治療後の心電図ではQT間隔が延長しているため、この選択肢は誤りです。 - 心収縮力の増強
心収縮力の増強は、陽性変力作用を持つ薬剤(ドパミンやドブタミンなど)の効果で見られることがありますが、心電図上でQT間隔の延長を伴うわけではありません。したがって、この選択肢は本症例には該当しません。 - 房室間の伝導の抑制
房室伝導が抑制されると、PR間隔が延長します。しかし、この心電図ではPR間隔に大きな変化は認められず、QT間隔の変化が主な所見です。この選択肢は不適切です。 - 洞房結節の脱分極促通
洞房結節の脱分極が促通されると、心拍数が増加する傾向にあります。しかし、治療後の心電図では心拍数の明らかな変化は見られません。この選択肢は適切ではありません。 - 心室筋の活動電位持続時間の延長(正解)
正しい選択肢です。QT間隔の延長は、心室筋の活動電位持続時間が延長していることを示します。この作用は、クラスIII抗不整脈薬やクラスIA抗不整脈薬の代表的な効果です。本症例では、この作用が治療後の変化に一致しています。
ワンポイントアドバイス
QT間隔の延長は抗不整脈薬(特にクラスIIIやクラスIA)の効果としてよく見られる心電図所見です。ただし、QT間隔が過剰に延長すると心室性不整脈(特にTorsades de Pointes)を誘発するリスクがあるため、治療効果とリスクのバランスを慎重に評価する必要があります。