第59回

第59回理学療法士国家試験 午前問題31

変形性股関節症でみられるのはどれか。

1.Tinel徴候
2.Froment徴候
3.Romberg徴候
4.Lhermitte徴候
5.Trendelenburg徴候

正解は5です。

解答解説

正解は 5.Trendelenburg徴候 です。

  • Trendelenburg徴候は、中殿筋の筋力低下により、立位で片足を挙げた際に反対側の骨盤が下がる現象です。変形性股関節症では、股関節の変形や痛みにより中殿筋の機能が低下しやすく、Trendelenburg徴候が現れます。この徴候は、股関節や中殿筋に問題がある場合に見られる典型的な所見です。

選択肢の解説

  1. Tinel徴候
    • 概要: 神経損傷や神経の再生過程で見られる徴候で、末梢神経の障害部位を軽く叩くと、その神経の支配領域に沿ってしびれやチクチクした痛みが生じる現象です。
    • 見られる病態: 主に手根管症候群や肘部管症候群などの末梢神経障害で見られます。正中神経や尺骨神経において、神経の圧迫や損傷があると、Tinel徴候が陽性となることが多いです。
  2. Froment徴候
    • 概要: 指で物をつまむ際、親指の末節が過度に曲がる現象です。これは、親指の内転筋(特に母指内転筋)の筋力が低下しているときに見られ、母指の屈曲筋(長母指屈筋)で代償するために生じます。
    • 見られる病態: 主に尺骨神経麻痺で見られる徴候です。Froment徴候が陽性の場合、尺骨神経が支配する母指内転筋の機能低下が疑われます。
  3. Romberg徴候
    • 概要: 直立で両足をそろえて立ち、目を閉じるとバランスを崩してふらつく現象です。視覚に頼らずに体の位置を保持することが難しくなるために起こります。
    • 見られる病態: 脊髄後索障害や前庭系の障害で見られます。特に脊髄癆(梅毒による神経障害の一種)やビタミンB12欠乏症に伴う脊髄障害などで陽性となることが知られています。
  4. Lhermitte徴候
    • 概要: 頸部を前屈すると、電気が走るような痛みやしびれが脊柱に沿って広がる現象です。
    • 見られる病態: 主に多発性硬化症や脊髄の圧迫、頸椎の疾患(例えば、頸椎症や頸椎椎間板ヘルニア)で見られます。脊髄の後索の障害が関与することが多いです。
  5. Trendelenburg徴候
    • 概要: 片脚立ちをした際に、立っている側と反対側の骨盤が下がる現象です。これは、中殿筋の筋力低下により骨盤を支えることができなくなるために起こります。
    • 見られる病態: 変形性股関節症や先天性股関節脱臼、特発性大腿骨頭壊死症など、股関節や中殿筋に影響を与える疾患で陽性となります。中殿筋の機能不全や筋力低下が原因です。

ワンポイントアドバイス

それぞれの徴候は、特定の神経や筋の障害を示唆する指標となります。Trendelenburg徴候は股関節や中殿筋に問題がある場合の代表的な徴候であり、変形性股関節症の診断においても重要です。他の徴候についても、どのような疾患で見られるかを覚えておくと、鑑別診断の際に役立ちます。