第58回

第58回理学療法士国家試験 午前問題3

82歳の女性。高血圧と糖尿病の治療を長期にわたり行っている。徐々に歩行障害がみられるようになり、転倒することが多くなった。頭部MRIのFLAIR像(別冊No. 1)を別に示す。画像所見で考えられるのはどれか。

  1. 視床出血
  2. 硬膜下血腫
  3. くも膜下出血
  4. 正常圧水頭症
  5. 多発性脳梗塞

解答解説

正解は5. 多発性脳梗塞です。

MRI画像(FLAIR像)では、脳白質に広範囲にわたる高信号域が認められます。この所見は脳血管障害による脳白質の虚血性変化を示しており、高血圧や糖尿病といった慢性疾患を背景とした多発性脳梗塞が疑われます。また、患者の歩行障害や転倒も多発性脳梗塞に関連する典型的な症状の一つです。

各選択肢の解説

  1. 視床出血
    この選択肢は誤りです。 視床出血では急性期において頭部CTで高吸収域が見られることが一般的です。今回のMRI像に見られるような広範囲な脳白質の変化とは一致しません。
  2. 硬膜下血腫
    この選択肢は誤りです。 硬膜下血腫では慢性的な場合、MRIで三日月状の異常信号が確認されますが、今回の画像所見や患者の症状(歩行障害)はそれとは一致しません。
  3. くも膜下出血
    この選択肢は誤りです。 くも膜下出血は急性期にCTやMRIで脳槽や脳回のくも膜下スペースに高信号が確認されますが、今回の慢性的な症状や画像所見はこれに当てはまりません。
  4. 正常圧水頭症
    この選択肢は誤りです。 正常圧水頭症ではMRIで側脳室の拡大が見られることが特徴ですが、脳白質に広範囲の高信号域が生じることは少なく、今回の画像所見や病歴とは一致しません。
  5. 多発性脳梗塞
    この選択肢が正解です。 多発性脳梗塞では、脳白質に虚血性病変が広がることでMRI(FLAIR像)に高信号域が現れます。患者の歩行障害や転倒も多発性脳梗塞の進行した症例でよくみられる症状です。

ワンポイントアドバイス

多発性脳梗塞は、慢性的な脳血管障害により脳白質に虚血性病変が蓄積して起こります。歩行障害、認知機能の低下、尿失禁などの症状が進行することが特徴です。MRIのFLAIR像で脳白質の高信号域を確認することが診断のポイントです。に評価することが重要です。