65歳の男性。間質性肺炎。労作時呼吸困難、咳を主訴に来院した。2年前から歩行時の呼吸困難が増悪した。3か月前から咳、労作時の呼吸困難の悪化を認め入院となった。入院時、心電図は洞調律。血液検査ではCRP 3.1 mg/dL(基準値:0.3 mg/dL未満)、KL-6 790 U/mL(基準値500 U/mL未満)であった。理学療法評価では、mMRC息切れスケールはグレード2。筋力はMMT上下肢4、6分間歩行テストは200 mであった。胸部CT(別冊No.5)を別に示す。
17.この患者の胸部CTとして最も可能性が高いのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解答解説
正解は4. ④です。
間質性肺炎(IP)の特徴として、胸部CTで認められる所見に蜂巣肺や網状影があります。これらは肺の線維化が進行した状態を示します。選択肢④の画像では、両肺底部を中心にびまん性の網状影が広がり、蜂巣肺(honeycombing)も確認されます。この所見は特発性間質性肺炎(IIPs)の中でも特に特発性肺線維症(IPF)に特徴的です。
患者の症状(労作時呼吸困難、咳の悪化)や検査所見(KL-6の上昇、CRPの上昇)とも一致しており、選択肢④が最も可能性の高いCT画像と考えられます。
各選択肢の解説
- ①
正常な肺のCT像を示しており、間質性肺炎の所見は認められません。この患者の症状や検査所見には合致しません。 - ②
左側胸膜に沿った液体貯留を認める画像であり、胸水が示唆されます。しかし、本症例では胸水の記載はなく、間質性肺炎に典型的な所見ではありません。 - ③
右肺に浸潤影を認める画像であり、肺炎や肺結核などが疑われます。間質性肺炎の線維化を示す蜂巣肺や網状影はなく、不適切です。 - ④(正解)
両肺底部を中心に広がる網状影と蜂巣肺が特徴的に認められます。これらの所見は特発性肺線維症(IPF)に代表される進行した間質性肺炎の典型所見であり、本症例に合致します。 - ⑤
肺野に散在性の粒状影を認めますが、これは粟粒結核やサルコイドーシスに特徴的な所見です。本症例の間質性肺炎には該当しません。
ワンポイントアドバイス
間質性肺炎の胸部CT所見では、網状影や蜂巣肺が診断の重要なポイントです。特に肺底部優位の線維化病変は、特発性肺線維症(IPF)に多くみられます。また、KL-6は肺線維化を示すバイオマーカーであり、間質性肺炎の活動性評価に重要です。
18.全身持久力トレーニングを行う場合、トレーニングを中止すべき状態はどれか。2つ選べ。
トレーニング前の所見は、血圧120/65 mmHg、心拍数85/分、呼吸数19回/分、SpO₂ 96%、修正Borg Scale 2であった。
解答解説
正解は1. と4. です。
トレーニング中止の指標には、以下の基準が含まれます:
- 血圧:収縮期血圧が90 mmHg未満または急激な低下
- SpO₂:90%以下または5%以上の低下
- 心拍数:過剰な増加(基準値より20~30%上昇)
- 自覚症状:動悸、胸痛、めまい、失神などの訴え
- 修正Borg Scale:自覚的運動強度が高すぎる場合(通常、6以上は注意)
各選択肢の解説
- 血圧:85/60 mmHg、心拍数:100/分、呼吸数:23回/分、SpO₂:93%、修正Borg Scale:5、自覚症状:めまい(正解)
このケースでは血圧が85/60 mmHgと低下し、自覚症状としてめまいがあるため、トレーニングを中止すべき状態です。低血圧やめまいは循環不全を示唆し、危険です。 - 血圧:128/60 mmHg、心拍数:94/分、呼吸数:29回/分、SpO₂:92%、修正Borg Scale:6、自覚症状:筋疲労
血圧やSpO₂が許容範囲内で、自覚症状が筋疲労のみの場合は、中止を必要としないことが多いです。ただし、修正Borg Scaleが6とやや高めであるため、状況に応じて負荷を調整します。 - 血圧:135/75 mmHg、心拍数:92/分、呼吸数:25回/分、SpO₂:96%、修正Borg Scale:6、自覚症状:なし
血圧やSpO₂、自覚症状が問題ないため、トレーニングを続行できます。 - 血圧:140/75 mmHg、心拍数:110/分、呼吸数:26回/分、SpO₂:92%、修正Borg Scale:5、自覚症状:動悸(正解)
このケースでは心拍数が基準を超えており、動悸という自覚症状があります。動悸は心臓に過剰な負荷がかかっている可能性を示唆するため、中止すべきです。 - 血圧:168/74 mmHg、心拍数:101/分、呼吸数:23回/分、SpO₂:91%、修正Borg Scale:4、自覚症状:筋疲労
血圧がやや高めであり、SpO₂が91%とやや低下していますが、90%未満ではなく、自覚症状も筋疲労のみのため、中止を要するほどの状態ではありません。
ワンポイントアドバイス
トレーニングの中止基準を理解することは、安全な運動療法の実施に重要です。特に、血圧の急激な変化やめまい・動悸・胸痛などの症状がある場合は、即座に中止し、医師の診察を受ける必要があります。