第56回

第56回理学療法士国家試験 午前問題10

52歳の女性。廃用による身体機能の全般的な低下によりバランス能力低下があり、バランス能力の改善を目的とした運動療法を行っている。開始当初、立位保持も困難であったが、現在は立位で物的な介助がなくても左右前後の重心移動が可能となってきている。歩行は平行棒内で両手を支持して軽介助である。次に行うバランス練習として最も適切なのはどれか。

  1. 杖歩行練習
  2. 上肢支持なしのタンデム歩行練習
  3. 上肢支持なしの立位で外乱を加える練習
  4. 片側上肢を支持した立位で下肢のステップ練習
  5. 両上肢でボールを保持しながら立位重心移動練習

解答解説

正解は4.片側上肢を支持した立位で下肢のステップ練習です。

現在の状況では、立位での重心移動は可能になっているものの、歩行は平行棒内で軽介助が必要な状態です。この段階では、さらなるバランス能力の向上とともに、歩行能力を徐々に改善していく必要があります。そのため、片側上肢を支持しながらステップ練習を行うことで、バランス機能と下肢の協調性を高め、歩行への移行をスムーズに進めることが可能です。

選択肢の解説

  1. 杖歩行練習
    杖歩行は歩行能力が向上した段階で実施する練習です。現在の状態では平行棒内で軽介助が必要であり、杖歩行を行うにはバランス能力が十分とは言えないため、時期尚早です。
  2. 上肢支持なしのタンデム歩行練習
    タンデム歩行はバランス能力が高度に求められる練習です。現在の段階では、平行棒内で両手を支持して歩行練習を行っているため、この練習は難易度が高すぎ、不適切です。
  3. 上肢支持なしの立位で外乱を加える練習
    外乱を加える練習は立位保持が安定してから行うべき練習です。現在は立位保持は可能になったものの、歩行では両手支持が必要な状態であるため、時期尚早です。
  4. 片側上肢を支持した立位で下肢のステップ練習
    正しいです。 ステップ練習は、歩行動作に直結するバランス練習であり、片側上肢の支持を残すことで安全性を確保しつつ、重心移動や下肢の協調性を鍛えることができます。現状の能力に最も適した練習です。
  5. 両上肢でボールを保持しながら立位重心移動練習
    この練習は立位のバランス能力を高める方法ですが、現在の段階では重心移動は可能であるため、より歩行に直結する練習が優先されます。このため不適切です。

ワンポイントアドバイス

リハビリテーションでは、患者の現状に応じた練習を選択することが重要です。 平行棒内での歩行が可能な段階では、ステップ練習のように歩行能力を高める練習が効果的です。練習内容の難易度を徐々に調整しながら、段階的に能力を向上させることを心がけましょう。