第56回

第56回理学療法士国家試験 午前問題9

75歳の女性。16年前に左上肢の安静時振戦が出現し、その後左下肢にも認められ動作緩慢となった。近医脳神経内科を受診しParkinson病と診断されL-dopaの内服治療が開始された。開始当初はL-dopaの効果を認めたが、パーキンソニズムの増悪に伴い徐々にL-dopaを増量された。最近L-dopa服用後30分程度で突然動けなくなり、日の中で突然の無動を何度も繰り返すという。この現象はどれか。

  1. wearing-off 現象
  2. Westphal 現象
  3. pusher現象
  4. on-off 現象
  5. frozen 現象

解答解説

正解は4.on-off 現象です。

on-off 現象は、Parkinson病患者がL-dopa治療を長期間続ける中でみられる運動機能の急激な変動を指します。「on」状態では薬効が現れて運動が可能となる一方、「off」状態では薬効が突然切れて無動になるという症状が、1日の中で繰り返し起こります。問題文に記載された突然の無動のエピソードが、この現象に該当します。

選択肢の解説

  1. wearing-off 現象
    wearing-off 現象は、L-dopaの効果が次第に短くなり、服薬後の運動機能の改善が持続せずに症状が再び出現する状態を指します。症状は薬効が切れた際に徐々に悪化するため、「突然」動けなくなるという描写には当てはまりません。このため、不正解です。
  2. Westphal 現象
    Westphal現象は、膝蓋腱反射が鈍くなるまたは消失する病的反射の状態を指し、主にハンチントン病や脊髄病変で見られることが多いです。Parkinson病の特徴的な現象ではないため、この選択肢は誤りです。
  3. pusher現象
    pusher現象は、脳卒中などで片麻痺を呈した患者が、患側へ体を押し付けるような姿勢をとる現象です。Parkinson病とは関連がなく、今回の症状にも該当しません。
  4. on-off 現象
    正しいです。 on-off 現象は、L-dopaの長期使用による運動機能の急激な変動を説明するものであり、「突然動けなくなる」「突然動けるようになる」エピソードがこれに該当します。問題文の記載内容と一致するため、この選択肢が正解です。
  5. frozen 現象
    frozen 現象(freezing of gait)は、歩行開始時や狭い場所を通る際に足が突然止まり、動き出せなくなる症状を指します。これは主に歩行障害として現れるもので、1日の中での突然の無動を繰り返す現象ではありません。そのため、この選択肢は不正解です。

ワンポイントアドバイス

on-off 現象は、L-dopa治療を長期間受けている患者における運動機能の変動として重要です。 「突然無動になる」という描写があればon-off 現象を疑います。一方で、wearing-off 現象は薬効が徐々に切れるという特徴があり、この違いを明確に理解することが重要です。