第51回

第51回理学療法士国家試験 午後問題88

右後下小脳動脈の閉塞で発症した脳梗塞でみられないのはどれか。

  1. 右片麻痺
  2. 右眼瞼下垂
  3. 右小脳性運動失調
  4. 右顔面温痛覚障害
  5. 左上下肢温痛覚障害

解答解説

正解は1.右片麻痺です。

右後下小脳動脈(PICA: Posterior Inferior Cerebellar Artery)の閉塞では、延髄外側症候群(Wallenberg症候群)が発生します。これにより、顔面と身体で交差する温痛覚障害や小脳性運動失調などが生じますが、錐体路が関与しないため、片麻痺はみられません。

各選択肢の解説

  1. 右片麻痺
    誤り(正解)。PICAの閉塞による脳梗塞では錐体路が障害されないため、右片麻痺はみられません。片麻痺は内頸動脈や中大脳動脈の閉塞で多くみられる症状です。
  2. 右眼瞼下垂
    正しい。PICA閉塞では交感神経系が障害され、ホルネル症候群(眼瞼下垂、縮瞳、無汗症など)がみられることがあります。
  3. 右小脳性運動失調
    正しい。PICAは小脳の一部にも血流を供給しているため、小脳性運動失調が発生します。右側の障害では右側の運動失調が現れます。
  4. 右顔面温痛覚障害
    正しい。延髄外側の三叉神経脊髄路核の障害により、同側(右側)の顔面で温痛覚障害が生じます。
  5. 左上下肢温痛覚障害
    正しい。延髄外側の外側脊髄視床路の障害により、対側(左側)の上下肢で温痛覚障害が現れます。

ワンポイントアドバイス

延髄外側症候群(Wallenberg症候群)の特徴を覚えましょう:

  • 同側(病変側):顔面の温痛覚障害、小脳失調、ホルネル症候群。
  • 対側(反対側):上下肢・体幹の温痛覚障害。
  • 錐体路は関与しないため、片麻痺はみられません。

PICA閉塞による脳梗塞は、顔面と体幹の温痛覚障害が交差する特徴が重要です。