50 歳の男性。高所から転落し脳挫傷と診断された。入院直後から他者への配慮を欠く言動が多くみられた。家族によると、受傷前は几帳面で温厚な人物であったが、受傷後は著しく自己中心的で粗暴な言動が増え、このままでは同居は難しいとの訴えがあった。
この患者に用いる検査で最も優先度が高いのはどれか。
1. ASIA
2. FAB
3. MMSE
4. Rey 複雑図形検査
5. SLTA
解答解説
正解は 2. FAB(Frontal Assessment Battery) です。
この症例では、高所からの転落による脳挫傷後に、性格変化や他者への配慮の欠如、自己中心的で粗暴な言動が見られます。これらの症状は前頭葉機能障害に関連することが多く、特に前頭葉の機能を評価するFAB(Frontal Assessment Battery)が適切です。FABは実行機能や判断力、社会的行動の調整などを評価し、前頭葉機能障害の程度や影響を把握するのに役立ちます。
選択肢の解説
- ASIA(American Spinal Injury Association)
ASIAは脊髄損傷の神経学的評価に使用され、感覚・運動機能のレベルを評価するのに適しています。今回の患者は脳挫傷であり、脊髄損傷がないため不適切です。 - FAB(Frontal Assessment Battery)
FABは前頭葉の実行機能を評価するテストであり、社会的行動や性格変化に関連した機能障害を把握するのに有効です。この患者の言動から前頭葉機能障害の疑いがあり、最も優先される検査です。 - MMSE(Mini-Mental State Examination)
MMSEは認知機能全般のスクリーニングに使用されますが、特に記憶や注意力の評価に重点があります。実行機能の評価が重要な今回のケースでは、FABの方が適しています。 - Rey複雑図形検査
Rey複雑図形検査は視覚認知機能や記憶機能の評価に用いられますが、特に前頭葉機能には特化していません。このため、今回のケースには優先度が低いです。 - SLTA(Standard Language Test of Aphasia)
SLTAは失語症の評価に使用される検査であり、言語機能の評価が主目的です。脳挫傷による行動や性格変化の評価には適していないため、本ケースでは不適切です。
ワンポイントアドバイス
脳挫傷後の前頭葉機能障害では、社会的な抑制や自己中心的行動、人格変化が起こりやすいです。FABは6つの簡便な課題で前頭葉機能を評価でき、実行機能障害のスクリーニングに適しています。前頭葉の機能障害が疑われる際には優先的に使用される検査であることを覚えておきましょう。