70歳の男性。3年前に右手の振戦によってParkinson病を発症し、在宅で治療を行っている。ADLは自立していたが、1か月前に風邪をひいてから歩く速さが遅くなり、歩行の際に一歩目が思うように前に出ず、歩き出してからも前方に転びそうになることが多いという。在宅での理学療法における歩行指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 両下肢に弾性包帯を装着する。
- 足関節に重錘バンドを装着する。
- 一歩目を小さく前に出すよう指導する。
- 床にはしご状の目印を付けてまたがせる。
- かけ声などをかけてもらいながら歩くよう指導する。
解答解説
正解は4と5です。
Parkinson病患者の歩行困難(すくみ足や突進現象など)に対する理学療法では、視覚や聴覚の外的刺激を利用することが効果的です。 床にしご状の目印を付ける(視覚的な刺激)や、かけ声などをかけてもらう(聴覚的な刺激)ことで歩行をスムーズにすることが期待されます。
各選択肢の解説
- 両下肢に弾性包帯を装着する。
弾性包帯はむくみや静脈うっ滞の軽減を目的として使用されますが、歩行困難の改善には直接効果がありません。したがって不適切です。 - 足関節に重錘バンドを装着する。
重錘バンドは筋力強化や運動感覚の向上を目的としますが、Parkinson病患者のすくみ足や突進現象を改善する効果は期待できません。むしろ動作をさらに遅くする可能性があり、不適切です。 - 一歩目を小さく前に出すよう指導する。
Parkinson病患者は一歩目が出にくいため、大きく足を出すよう促すことが効果的です。この指導は誤りであり、不適切です。 - 床にはしご状の目印を付けてまたがせる。
視覚的な刺激を与えることで、歩幅やリズムを安定させる効果が期待できます。この方法はすくみ足の改善に有効であり、適切な指導法です。 - かけ声などをかけてもらいながら歩くよう指導する。
聴覚的な刺激(リズムやかけ声)を利用することで、歩行がスムーズになる場合があります。リズム刺激を取り入れた指導法は非常に有効であり、適切です。
ワンポイントアドバイス
Parkinson病の歩行障害には、外的刺激(視覚・聴覚)が有効です。 床に目印を付ける、音楽やかけ声を利用する方法は、すくみ足や突進現象の改善に役立ちます。一方で、筋力強化を目的とした重錘バンドや弾性包帯は効果がなく、動作を妨げる可能性があるため注意が必要です。